超巨大現場のDX座談会レポート 第2弾 〜北海道ボールパークFビレッジのゼネコンサブコン連携〜
北海道、北広島市で2023年3月にオープンした『エスコンフィールドHOKKAIDO(以下、ボールパーク現場)』では、設備工事でSPIDERPLUSが活用されました。
現場監督の皆様に再び集まっていただき、工事終盤の検査のことや情報連携について、お話を伺いました。
※座談会はマスク着用で行なわれました。撮影時のみマスクを外しています。
取材へのご協力
株式会社大林組
株式会社関電工
株式会社西原衛生工業所
東光電気工事株式会社
新菱冷熱工業株式会社
斎久工業株式会社
SPIDERPLUSによる連携について
2020年頃から大型現場を中心に広がっている活用方法の1つにSPIDERPLUSによるゼネコンとサブコンの情報連携が挙げられます。
電気、空調、衛生の各社が工事の進捗をSPIDERPLUS上に記録していき、ゼネコンの設備部がそれらの情報を元に設備工事の進捗を把握していく、という方法です。
ボールパーク現場での情報共有の概略は以下の図の通りです。
SPIDERPLUSと検査の実施について
検査の実施と使った機能
ここからは、設備工事各社の皆様に、検査に使って便利だと感じた機能について伺います。
斎久工業 江口様
勾配測定機能を活用しました。
計測器を検査箇所に伸ばしていき、SPIDERPLUSで数値を取得することができます。
勾配検査を行なう場合、検査箇所が高いところにあることが多く、脚立などを用意して、高所に登るための手間が必要です。
SPIDERPLUSの勾配測定機能ならば、計測器がBluetoothで連携されて、数値を手元のSPIDERPLUSに取得できますし、検査を行なうための足場づくりなど、段取りを省略することができます。
脚立を用意したり運ぶ、ということも不要です。
その結果2〜3倍は効率化に繋がったと感じています。
他の現場でも汎用的に利用していけそうだと感じていますし、6尺脚立で届くところでも使えるのではないかと思っています。
新菱冷熱工業 愛甲様
勾配検査機能は階高によっては棒を伸ばしても届かないところがありました。
実は現在、既に別の現場で作業が始まっているのですが、そこでは下から作業車を使わずに検査をすることができて、便利だと感じています。
東光電気工事 阿部様
指摘管理機能を活用しました。
図面上で是正工事が必要な指摘箇所をタップすると、指摘内容や業種を選択して、業種別に指摘事項の一覧を出力することができます。
従来のような、指摘事項をまとめて、それらを紙に印刷して渡す、などの手間が必要なくなりますし、指摘事項に対して是正が完了したら、図面上でアイコンの色が変わり、進捗をひと目で把握することができるのも便利だと感じました。
登録した指摘事項は図面データ上に写真などと紐づくので、現場のどの箇所で起こっていることなのかを明確に把握できるのも手間を削減することに繋がったと思います。
東光電気工事 加倉井様
指摘管理機能は竣工検査でも使いました。
2〜3人で各フロアを回ると指摘事項が膨大な量になり、図面上に写真という明確な情報で紐付きます。
それらを協力業者の職長さんたち6〜7人に対して渡して、是正対応をしてもらいます。
是正された、という状態になったものは、今度は自分自身で目視確認して、SPIDERPLUSに状況を反映させていました。
所内に回覧する時に、以前ならばA1サイズの紙に印刷してから実施していましたが、それに比べると、はるかに効率的と言えるのではないでしょうか。
時間の効率を考えると、2倍程度は楽になったと思っています。
新菱冷熱工業 愛甲様
指摘管理機能は、皆で一斉に書き込みをしていくことができるのも便利でしたね。
設備工事をとりまとめる立場からも、指摘管理機能についてお話を伺いました。
大林組 岡田様
指摘管理機能を使っている間、スタジアムの1階部分で15項目ぐらいの指摘事項が出たことがありました。
これはフロアあたりの指摘事項としては標準的な数だと思います。
紙で同様のことを管理していくとなると、指摘事項の登録や仕分けなどが膨大な手間になっていくと思います。
SPIDERPLUSを使うことで3倍は効率が違うのではないかと思っています。
是正指示をする立場としても使いやすい、と感じました。
平準化に向けて
人が作業をするということ
竣工した今、「平準化」を目指したルールづくりの重要性について、関電工の坂本様は次のようにお話します。
関電工 坂本様
指摘事項登録をする場合でも、現場写真に添えるメモにせよ、言葉で入力しますが、それは人の手を介するものです。
ルールがなければ同じ現象を見ても、言葉による表現のしかたが異なってしまい、それが「解釈のゆらぎ」を生み出します。
そうすると、今度はその解釈について手間が発生してしまいます。
例えば「りんごが赤い色をしていること」を伝えることを考えてみましょう。赤い色のりんごを写真に撮って、そこにある人は「赤い りんご」とメモを添えるとします。
同じ赤い色をしたりんごを前に、別の人が「りんごが赤い」とメモしたら、どうでしょう。
見る人によっては解釈が異なってきてしまいます。
ささいなことのように思えるかもしれませんが、これだけの現場では工事に関わる人の数も膨大です。
大きな現場だからこそ、言葉遣いやフォルダ構成などを関係者間で共通のルールを作り、それを守っていきながら作業をしていくことで現場内の平準化が成り立っていくと思います。
指摘内容の平準化も書かれたことに対して「どこまで対応するか」もひと目でわかるようにすれば、もっと活きてくるのではないでしょうか。
これからの建設DX
働き方改革はまだまだ続く
2024年4月から、建設業には働き方改革関連法が適用されます。
法適用を目の前に、各社では効率化によって生産性を高くするための取組が進む状況下で、現場を統括する立場としては、こうした動きについてどのように見据えているのでしょうか。
大林組 若尾様
作業時間の短縮や、効率化を目的にデジタル化することは当たり前になってきています。
自分たちが若手の頃はデジカメで撮って、別に書いたものを取り込んで、と様々な手間がありました。
SPIDERPLUSを活用している現在を比べてみると、現場の検査で2〜3時間ほど巡回してて、事務所に戻ったらすぐに帳票を出すことができます。
それをもとに関係者が読み合わせをすることができ、それにもとづいてそれぞれが次の段階に移ることができるのは便利です。
今デジタル化で省くことができているのは、手を介する部分で、特に設備の施工管理で影響が大きいと思います。
大きな現場では帳票の量も膨大になります。
SPIDERPLUSを使って設備工事各社の皆さんが検査を終えると帳票を作ってくれます。
帳票を印刷して、回覧して、ハンコを押し、その後に整理する過程がつきものです。
膨大な量の帳票に関して、データ上で回覧や整理までもできるようになれば、紙を出す手間や、紙を回覧・整理などの手間も省けるはずです。
デジタル化がもっと進むことによって、これまで紙でしていたことを、データ上で完結させられるようになれば、サーバ上の特定の箇所を関係者が見に行くことで確認が済むようになりますし、手間も働き方も変わっていくことになっていくはずです。
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写真:森本修大(※本ページ内の画像の無断転載・二次利用はお控えください)
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