• 空調衛生設備
  • 1500名~
  • 大阪府

デジタライゼーションではなく、真のデジタルトランスフォーメーションとは

建設投資額は横ばいながら、人手不足問題が継続し、翌2024年からは働き方改革関連法が適用されることにより、残業時間に上限が設けられようとしている建設業は、働き方を変えていく過渡期にあります。

ダイダン名古屋支社を訪ね、今まさに走っている最中の、デジタルトランス・フォーメーションで目指すことについてお話を伺いました。

お話:
名古屋支社 技術管理部品質課 担当部長代理 兼 技術本部ICT推進部担当部長代理
大澄武司様(写真向かって左手側)
名古屋支社 技術第二部技術第一課 荻野雄大様(写真向かって右手側)
※撮影時のみマスクを外しています

 

ーお二人の役割についてそれぞれ教えて下さい。

大澄様(以下T):名古屋支社の技術管理部に所属し、品質や施工の総括的な管理に加え、現場で起きた問題の解決などを行っています。

また、新開発されたICT技術や建設キャリアアップシステムなどの新体制を組み合わせて、業務を改善する取り組みを進めています。

荻野様(以下Y):私は現場管理の仕事をしています。SPIDERPLUSを使い出したのはこの2年ほどです。

 

ー大澄様がご自身の現場経験も踏まえて整えたものが、荻野様の働く現場に伝達されるのですね。ちなみに現場で何かある際は、荻野様から大澄様に情報が渡るのですか。

T:現場は本当に忙しく、情報をこまめに挙げることが容易ではありません。こちら側が知見にもとづいてニーズを先取りして動きます。

 

機能を一律で使うのではなく、趣旨に寄与する機能を選んで活用

ー荻野様はSPIDERPLUSを2年ほどご利用とのことですが、現場でのご活用についてもう少し詳しくお聞かせくださいますか。

Y:以前の現場で「便利だよ」と聞いてはいました。今回の工事が始まるとともに使い始めました。撮影した写真をリアルタイムで共有出来るのと、図面に写真が紐づくことによって、どこで撮ったかを直感的に把握できることも便利です。

 

ーオプション機能は何か使っていますか。

Y:指摘管理機能です。実は当たり前のように使っていて、オプションという認識もありませんでした。

指摘管理機能を使うことによって、既に図面データに紐付いている現場写真やコメントから指摘事項を振り分けていくので、作業の手間を省くことができてラクだと感じています。指摘事項の是正についても、手作業では進捗の把握に限界がありました。

SPIDERPLUSを活用すると、アイコンが進捗に応じて色分け表示され、状況がひと目で分かります。

T:指摘管理機能について、SPIDERPLUS活用の位置付けをお話したいです。

 

ーぜひ詳しくお聞かせください。

T:我々はSPIDERPLUS活用を、品質管理のためと位置付けています。そのためには写真にメモを添えるのではなく、指摘管理機能を最初から使うようにしています。

合理化のための手段としてSPIDERPLUSを活用するため、全ての機能を一通り使うのではなく、趣旨に寄与するものを選んで使っていきたいのです。

指摘管理事項の蓄積は、現場や工事の「ビッグデータ」です。いずれはそのデータを次の現場を効率よく進めるために活用したいという構想があります。

 

ーデータを活用していくことで、次の現場を効率的に進めるという考えでしょうか。

T:そうです。例えば以前の現場でうまくいかなかったことがあったとします。データを活用することによって、どういう背景のもと、なぜうまくいかなかったのかと、次はどう対処すればよいのかを考えることができます。

こうして新しい現場をゼロから始めることの繰り返しにせずに済みますし、さらに良い運営にも繋がりますよね。こうした考えから、彼(※荻野様)が指摘管理機能をオプションと意識せずにいることは、健全だとすら思うのです。

 

ー指摘管理機能に情報を集約させることは導入当初からお持ちでしたか。

T:そうです。人が少なくて、仕事は多いという現在の状況は、言ってみれば「1」ある仕事を1人の人間が出来ていないということです。

SPIDERPLUSを活用して目指すことは、個別の機能を使って目先のことがラクになるだけではなく、本質的には1人の人間が例えば「1」や、「1以上」出来るようにする、ということのはずです。

例えば荻野さんが現場で一生懸命登録してくれていたデータを有効に活用していくためにも、個別の機能を漫然と使うのではなく、目的に沿って選んで使っていくのです。

 

イノベーター、アーリーアダプターが導き、変わっていく働き方

ー荻野さんは現場でご覧になっていて、SPIDERPLUSの使いこなしを分けるのはどういう点にあると感じていらっしゃいますか。

Y:まず使ってみること、だと思っています。一律で開催される講習会もありますが、まず自分が調べたり、同じ現場の人に進んで質問して解決したり、サポートに電話をかけたりしています。

 

ー活用方法は1人ひとりが学んで身につけるのですか。

Y:同じ現場内で、使い方を共有することはありますが、自ら使っていく姿勢があることは大きいと感じています。

T:長期的に見据えると、まずイノベータやアーリーアダプタを育てて、そこに続いてみたいと思わせる人が出てきたら、その時が教育を与える最適なタイミングだと考えています。

イノベーター、アーリーアダプターの間口を広げるためにも、昨年から新入社員教育にSPIDERPLUSの研修を始めました。

 

ー新入社員教育ではどんなことを目指していますか。

T:配属される現場には先輩社員がいますね。新たな教育を受けた新入社員が先輩社員に新たな提言をして、現場での仕事の仕方を変えていくことを目指したいのです。

 

ー昨年の教育が効果を出すのは次の春からでしょうか。

T:正確に計算はしていませんが、3年から5年はかかると考えています。

新入社員の中にもイノベーター、アーリーアダプターが出来るので、その割合がいわゆる「16%の壁」を超えるのはいつの時点か、と考えるとまだ時間がかかると思います。さらに言えば、「SPIDERPLUSで◯時間削減した」ということでさえ、本質的でないと思っているのです。

Y:実際に現場で働いていると、今回は効果が出たとか出なかった、ということを考えている余裕はないのですね。

T:成功を目指すためには、すぐに結果がでなくても先を見据えて取組んでいくことが必要なのです。

 

ー言われてみるとデジタライゼーションではなく、デジタル・トランスフォーメーション(DX)というのは仕事の仕方それ自体を根本的に変えていくことですよね。大澄様はどういう風に考えていますか。

T:究極の目的はSPIDERPLUSが他の技術と結びついて、本当に人にしか出来ないことだけを目の前に出してくれるようになることです。そうなれば、技術者は専門知識を活用して、人でなくては出来ないことに最大限取り組むようになります。

こうしたことこそ、仕事の仕方が根本的に変わる、DXと呼ぶにふさわしいと思います。

これはよく後輩たちにも話すことなのですが、例えば山に登ることを考えてみましょう。

何のために登山をするかと言えば、山の頂に到達するためです。
それが、例えば「5合目あたりまでとりあえず、一緒に歩きませんか」というのは「山頂を目指す」という本来の目的とは違いますよね。
目的が近視眼的であると試行を繰り返し組織は疲弊します。

 

ーSPIDERPLUSの活用浸透で言うと山頂でトップグループが楽しそうにしていて、そこに加わりたいと思ってもらうようにすることですね。

T:イノベーター、アーリーアダプターは、いち早く山頂に到達して、楽しそうにパーティをしているグループのようなものです。
彼らから登って来たルートがSPIDERPLUSという新ルートであれば、そのルートを使ってみんなで山頂を目指したいと思いませんか。

こういう考えのもと、SPIDERPLUSが掲げる「”働く”にもっと「楽しい」を創造する」というミッションには大いに共感しているのです。

そのためにも、今できることの範囲ではなく、いつか技術的な課題が追いつく日が来ることも見据えて、考えなくてはいけません。会社が決めて一律にデジタライゼーションをする、ゲゼルシャフト的な取り組みをするのではなく、志を同じくする人どうしが目的に向かって共に走る、いわばゲマインシャフト的な取り組みを進めていくべきなのです。

 

ーありがとうございました。