技術活用で働き方改革を牽引する女性たちの取り組み
三機工業の関西支社では、事務職の社員で構成されるワークシェアグループがSPIDERPLUSを活用して現場の支援・DX推進をしています。現場業務の経験を全く持たないメンバーが、コミュニケーションを重ねながらノウハウを蓄積し、次第に現場ニーズを先取りしながら支え、更なる社内浸透を進め、働き方改革を牽引するまでになった取り組みについて、お話を伺いました。
お話:岩松青郎様(業務部長)、吉田幸子様(業務部、写真後列右から2番目)、岩本亜希子様(設計1部、写真後列左から2番目)
※撮影時のみマスクを外しています
-本日はお時間を割いてくださり、ありがとうございます。ワークシェアグループの皆様の役割について教えて下さい。
吉田様(以下Y):現場担当者の時間外労働削減のために2018年度に結成されたプロジェクトの一つです。ワークシェアグループは支社支店の部署の垣根を越えて、事務業務を担当する社員を中心に構成されていて、今のメンバーはほぼ女性社員です。ワークシェアグループ専属の人もいますが、殆どが本業の事務業務と並行して作業をしています。そのため、両方の業務を効率よく行なえるように工夫しています。メンバー内で各現場の窓口担当者を専任し、主に工事写真グループ、書類データ管理、掲示物作成グループで役割をシェアし、現場単位で竣工まで支援を行なっています。
-今日のお二方はそれぞれ同じ業務を担当していらっしゃるのですか。
Y:私はワークシェアグループの専属で、現場からの連絡を受け、打合せをした内容をグループ内に展開しています。
岩本様(以下I):私は工事写真の担当をしております。
-工事写真業務についてお聞かせください。
I:黒板作成や、帳票のブランク部分を埋めるなど、Excelで対応できることをこちらが引き取ることで現場に時間をかけずに済むように、細やかさや丁寧さを心がけながら対応しています。
-女性ならではの丁寧な作業が現場と相互に行き来するということですね。作業をする際は現場からの指示にもとづくのですか。
I:そうですね。いつ作業を始めていくかは打合せをして決めていきますが、あらかじめ準備をしておく場合もあります。現場で写真を撮り始めていることがSPIDERPLUS上で確認できたら、こちらからクラウド上で情報を先取りして支援することもあります。
-SPIDERPLUSの作業にかかわり始めたのはいつ頃からでしょうか。
Y:ワークシェアとしては、グループ結成の2018年度から二つの現場が選定され、そこから始まりました。SPIDERPLUS導入前は現場担当者が紙の図面を持って写真を撮影し、事務所に戻ってから整理をし、全て現場だけで作業が行なわれていました。
内勤支援を組み込んで社内浸透を倍以上に
-ワークシェアグループの構想は以前からあったのでしょうか。
Y:そうですね。当時から現場では工事写真に関する要望が最も多かったのです。ただ、SPIDERPLUSを標準ソフトとして導入はしたものの、その頃はまだ使用者が少なく、有効に活用が進んではいなかったのです。その点に注目してワークシェアグループが「ツール」として利用していくことにしました。関西支社で支援がスタートして工事写真の支援の割合は2年目で39%、5年目には75%を越え、それがSPIDERPLUSの社内普及率にも影響しました。
-現場だけではなく、内勤の支援も全て組み込んだことで社内での利用率も倍以上に増えたのですね!
岩松様:関西支社としてはそうです。
-ワークシェアグループのメンバーは現場経験のない方達ですが、SPIDERPLUSの作業については、どのようにノウハウを習得していきましたか。
Y:メンバーには図面に関わる仕事をしている者がいませんでした。CAD図面に慣れることからスタートして、現場担当者に教えてもらいながら作っていきました。
I:一つずつ経験を積み重ねていって、次第にワークシェアのメンバーが、図面から貫通箇所を読み取ることができるようにもなって、これが第一歩になり、現場ですぐにSPIDERPLUSを使用してもらう機会が増えていきました。
-基本の「き」から始まって、単に作業を終えるだけではなく、現場の状況を作業を通じて理解していってグループの作業内容にも反映させていったのでしょうか。
I:そうです。今度は現場で教わった業務をグループ内に水平展開させて、誰もができることで、「難しい」という固定観念を持たずに皆で支援できるように進めていきました。現場は撮影から始めることができるようになったので、「帳票出力までがスムーズになった」という声や、黒板事例を私達が現場にサンプルとして掲示したことに対しては「早い段階で台帳コメントが決定した」などの反響を頂けるようになりました。
-単に作業を代行するだけではなく、皆様のお仕事がきっかけで、それが現場の平準化にもつながっていったということですね。
I:最初は工事写真に関する知識もなかったため、取組内容を説明することも大変でした。私達が現場からの依頼を理解することもそうですが、現場からもどう頼んだらよいのか、手探りだったのです。現場のことが分かっていく中で、単に撮影用のアイコンを置くのではなく、そこにコメントも入れていくなど、作業を提案型にしていくことによって、徐々にグループの作業スタイルも確立されていきました。こうして現場からグループへの依頼も増えました。初期の頃に色々支援してくれた上司が、「できない作業ではないよ」とか「慣れたら簡単だよ」と鼓舞してくれたのは大きかったです。そこをクリアしないとSPIDERPLUSの活用が、これほどまでに広がることはなかったと思います。
-社内コミュニケーションで背中を押してもらったのですね。
I:あとは、現場担当者から「ラクになった」などの反響をもらうことで、自分達の作業が役に立っているという実感にもつながり、そこから吉田が現場に働きかけて更に取り組みが進んでいきました。
-双方の取り組みがコミュニケーションを介して効率化に寄与しているのですね。
I:実は早い段階で、「PCでできること」と、「タブレットでできること」を分割しました。PCでできることは私達の役割、と受け止めてそこから分業化に踏み切ることができました。
Y:当初は作業に関するやりとりも電話が中心でした。実際に試してみたら分業できることが明確に見えてきたので、そこでの経験を元に「この業務はこちらで受けますね」というように、今に繋がることが可視化されていきました。
現在では、着工時に現場を訪問してヒアリングを行い、工事の内容や期間を把握し、そこから支援内容や時期を確認していき、関係者に情報共有を行なって作業を進めていきます。
-帳票作成について、もう少し詳しく作業内容をお聞かせください。
I:現場では最新のメモをアップロードすることを徹底してもらっています。それを見れば現場に常駐していなくてもできることとして、帳票のチェックをワークシェアグループが受けます。図面やスケールとの違いなど、写真などと見比べた上で補足事項として現場に伝えていきます。提出前の帳票のチェックは重要で、結果として、現場の若手が行なっていた作業をこちらで代行し、その分を現場は別の業務にあてることができるようになりました。プロジェクト発足の趣旨も、一つはこのような点にありました。
-見比べてすぐに気づくためにはノウハウが要るのではないでしょうか。
Y・I:経験です!
Y:最初は大変でしたが、皆で文字通りに作業をシェアして、期限までにメンバー内でダブルチェックを終えて現場に戻すようになりました。座学で何かを学んでから実践ではなく、実践と経験数を増やすことがチームのノウハウを生んでいったと思っています。
I:それから最近はオプション機能の照度測定の帳票サポートの依頼が増えています。帳票は全てこちらで作成しています。測定ポイントにアイコンを置き、以前は二人体制だったのが、現場ではタブレットと測定器のみで一人で対応ができます。これに関してもスパイダープラス社の営業の方に教えていただいたおかげで、電気部門へ支援業務として定着化させることができました。
Y:実は今度、電子納品についてもスパイダープラス社からレクチャーを受けて、社内に普及させていこうとしています。他の機能についても、一つずつ対応できることを増やしてグループのノウハウを増やしていきたいと考えています。
I:営業の方がSPIDERPLUSの使い方を現場に説明しに来てくれる際に、私たちも一緒に聞いて、機能説明のフォローなどもしていくことができるようにしています。
Y:現場の方たちは業務に追われ、工事を進めながら機能を覚えていくのは大変だと思います。分業化とはいえ、グループが先取りできる部分もまだあると思っていて、そのためにもSPIDERPLUSの機能に関する知識習得は積極的に行なうようにしています。
I:試験・検査は現場主体で進めることにはなりますが、今後も一つずつ経験を積み重ね、私たちも現場のやりとりの中で頼めることを、お互いが認識し合いながらうまく進められるようにしたいと考えています。
グループ内も現場もイキイキ働くために
-ワークシェアグループ内のコミュニケーションはどのような方法が多いですか。
Y:ワークシェアグループのメンバーは基本的にそれぞれの本業を持ちながら作業を進めるので、チャットを活用しています。チャットだとログも残るので、途中からチームに加わった人にとっても生きたマニュアルのような役割を果たすことにもなりますし、元からいたメンバーには復習する手段にもなります。
これだけでは勿論なく、月一回の会議や技術の勉強会を開催し、現場経験者からも専門的な内容の助言を受ける機会を設けています。ワークシェアとして日頃のお互いを支え合うコミュニケーション、チャットのログからそれぞれが学ぶことが組み合わされています。
-コミュニケーションは業務の遂行やノウハウの習得、ついてはグループの成長という観点も重要なのですね。
I:そうですね。ワークシェアグループに関しては離れた事業所では1人でグループ業務を行なっているため、吉田が全員で会う機会を作ったり、グループ内で積極的に声をかけたりすることで、それぞれの状況を把握できるようにコミュニケーションをとっています。私自身はグループチャットをくまなくチェックすることによって、それぞれの作業の状況を把握し、そこからコミュニケーションをとるようにしています。たまには声も聞きたいですし、とにかくそれぞれが孤立してしまうことがないように気をつけています。
-吉田様はグループ内外で人的なマネジメントを引っ張っていらっしゃるのですね。
Y:現場からの依頼が増えるにつれて、「グループではどんなことができるの」と聞かれることも増えています。そこで、ワークシェアグループの支援の活動内容を一覧にしてPRしています。依頼対応や日々のやりとりは電話・メール・チャットで行われはするのですが、来社時に直接声をかけて状況を把握し、受け身の姿勢ではないようにしています。そうすることによって、現場からもこちらに声をかけやすい体制を作っています。
I:ワークシェアグループでは現場向けにSPIDERPLUSのマニュアルも作っています。ひと目見れば作業ができるぐらいまでに噛み砕いて、シンプルなものにしています。
現場とのやりとりを重ねる中で、メモの入力で迷うことが多いということに気づきました。マニュアルと画面を照らし合わせれば、現場の方達もメモの取り扱いで躓くことがなくなりました。
-現場サポートにとどまらない、推進役の域ですね!DX推進の本質的な目的として何を見据えていらっしゃるかをお聞かせください。
Y:2024年からの法適用に対して、現場の作業時間削減にさらに貢献したいです。SPIDERPLUSもそうですが、他にもウェアラブルカメラなどデジタルツールを組み合わせていけば、打合せも詳細なものになり、そうした取り組みの末に効率化が進めば、現場も内勤も垣根を越えてイキイキと働くことができると思います。
岩松様:建設業界では長時間労働が業界全体の問題となっています。理由は現場の業務量の多さにあるのではないでしょうか。長時間労働は離職の増加にも繋がりますので、現場はますます人が足りなくなり、一人ひとりの負担がもっと増え、更に困ることになってしまいます。ワークシェアグループなどの内勤が現場の業務をカバーしていくことによって長時間労働の解消を推し進めることができれば、現場がイキイキ働くことができるようになります。そのためにも、まずはワークシェアグループがイキイキと働いて、ひいては会社全体がイキイキしたものになっていくと考えています。
-ありがとうございました。