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「先輩のことは尊敬している。でもこのままアナログではいけない。」熊本の現場所長が草の根でDXを進める理由とは?

お話:
株式会社吉永産業
建築次長 志垣 豊和様(写真中央)


吉永産業は熊本県で1948年から続く総合建設業。
「地域とともに歩み、未来を創造する吉永産業」をスローガンに、「次の世代に残る環境づくり」を行っている。

会社として「デジタル技術に長けた人材の社内育成」を中期経営ビジョンに掲げ、現場施工部門、営業部門、バックオフィスなど業務のあらゆる面においてデジタル技術の導入を、今まさに積極的に進めている。
その背景を伺った。

現場で草の根から進めるDX

80年近くになる同社で、デジタル技術を使った生産性向上を、現場起点で始めている現場所長がいる。
志垣 豊和氏。自らの担当する現場でSPIDERPLUSを導入し、若手社員たちと一緒に生産性向上のための取り組みを始めている。

SPIDERPLUSを使い始めたきっかけは、この現場でデジタルツールを使って若手が活躍しているという実績を作ることができれば、デジタルの活用を全社的に広げていけるのではないかという期待があったから、と語る。
実はこの言葉の背景には、会社としてはデジタル化への注力を掲げて取り組む一方で、思うようには進んでいない状況がある、と吐露する。

全社でDXが進まない理由

吉永産業では、時代のニーズに合った対策をとろうとしている。
また、現場から取り組みたいことについて要望を寄せられたならば、出来る限りのサポートをしてくれる土壌があると志垣氏は感じている。

ただし、現場レベルでは業界特有の慣習や価値観もあり、志垣氏を始めとした社員たちが思うようにはなかなか進んでいない。


志垣氏
志垣氏
会社の総会があるたびに、経営層からデジタル化を進める意思を社員に向けて発信したり、デジタル化の成功事例は総務から日々全社に向けて発信されるなど、会社として熱心に取り組んでいることは間違いありません。
しかし、現場レベルになると、なかなか一筋縄ではいかないと感じます。

志垣氏が考える、現場人材が思うようにデジタル化が進んでいない原因は2つある。

1. 現場の意見を尊重するあまり、トップダウンでの取り組みが難しい

建築部長がデジタルツールを見つけて「こういうのがあるんだけど、どう?」と話してはくれるが、全社的な導入に対する強制力はない。
現場が必要ないと答えれば使われることはない。

また、志垣氏が個人レベルで見ると、デジタルツールの導入に対して、嫌悪感を示す人材も一定数いるのが実情である。
結果として、デジタルツールの導入以外にも、現場の生産性を高めるための取り組みは、各現場や個人の裁量に任せられる部分が多くなってしまい、会社単位でのデジタル化に広げていくことは容易ではない。

2. ベテラン人材の声が大きい

経験豊富で熟練した社員の存在は、会社にとって重要なものである。
そのために、現場でベテラン社員から反対が起こると、上層部が強制力をもって施策を進めることが難しいという面もあるのではないか、と志垣氏は語る。


志垣氏
志垣氏
先輩たちのことをとても尊敬しています。先輩社員たちから私たちが学ぶべきことは多い。
しかし、これからの建設業を担う若手社員たちのことを思うと、いつまでも同じ働き方をし続けられては困ると思ってしまいます。

ベテラン人材からは、「昔ながらの紙図面に手書きの管理の方が良いんだ」という声を良く聞く、という。


志垣氏
志垣氏
確かに今までの経験やノウハウが詰まったやり方はとても素晴らしいと思います。
ただ、若手社員たちにとってはSPIDERPLUSの方がずっとやりやすいと思います。

デジタルツールを使うことの意義

志垣氏が現場でSPIDERPLUSを使おうと思ったきっかけは、会社の若手後輩社員たちの定着に対して危機感を持ったからだという。


志垣氏
志垣氏
これからの建設業を担ってくれる若手社員たちに、仕事を長く続けてほしいという思いがあります。
建設業のシニア世代はもしかしたらあと10年くらいしか続けられないだろうから、このままの仕事の進め方でも良い、と思ってる人もいるかもしれません。

私はそうは思っていません。
未来永劫続けていかなきゃいけない産業なので、若い人たちから変えていかないといけないと思っています。

デジタルツールを使うことの意義として、「若手の成長を早める」という側面もあるという。
先輩社員たちの意見を優先せざるをえない、会社の気持ちは分かる、とした上で志垣氏はデジタルツールの導入について次のように続ける。


志垣氏
志垣氏
若手がまず育ってくれないと、ベテラン社員と同じ仕事を任せるわけにはいきませんから。
しかし、デジタルツールを使うことで、私たちが時間をかけてやっていたことを若手が短い時間でできるようになる。
そこで空いた時間を使って、もっと本質的な業務に時間を使って学べるようになる。
その結果として、より早く成長できるんじゃないかと思います。

業界全体を見渡すと、紙をデジタルに置き換えたり、いまさらそんなことしても意味ないよ、という人が大多数だと思います。
今まで私もそういう人たちをかなり見てきました。
しかし実際は、デジタルだろうとアナログだろうと、やるべきことは変わりません。
若手社員がベテラン社員よりも作業が早く終わったらびっくりしますよね。

さらに、あの若手の現場は土日休んでるのに工期が遅れていない、請求書にも追われていない、となれば、ベテラン社員は脅威に感じると思います。
むしろそう感じてもらわないと、なかなか変わらないのかなと思います。

これから目指すべきこととして、「デジタルの力で若手がこんなに活躍できているぞ」ということを全社に発信していくことを志垣氏は掲げる。

若手社員がSPIDERPLUSを活用して検査をしっかり行い、是正対応のヌケモレもないとなれば、社内でその社員は「すごい」という話が広まり、その評判とともにデジタル活用の重要性も広まるのではないかと考えているのである。

若手が中心に変化を起こすことへの切望

若手社員の成長に加えて、志垣氏はデジタルツールを使った効率の良い働き方を覚えることはベテラン社員たちにも重要であると説く。


志垣氏
志垣氏
今の現場業務の紙からデジタルへの変化の流れは、結局は図面が手書きからデジタルに変わった時と同じだと思います。
私が建設業に入ったのもちょうどそのタイミングで、その時も若い人たちが中心になって使いこなしていきました。

その時、私は「先生」と呼ばれていました。
それと同じで、若手社員がSPIDERPLUSをどんどん使いこなして、ベテラン社員にも教えられるようになるのが理想的だなと思います。

若い人たちはやっぱり、デジタルツールを使いこなすようになるまでが早くて、羨ましいと思います。
どんどん使いこなして、効率の良い働き方を進めていってほしい。
また、他の現場の誰かがSPIDERPLUSを使って効率を大幅にアップさせたなどの情報がでまわれば、同期入社した他の若手社員たちにとって、良い刺激になると思います。
それをきっかけに使える人がどんどん増えて、若い世代中心に変えていってほしいと思っています。

志垣氏が若手社員たちに期待をかけるのには理由がある。

若手に期待をかける理由

志垣氏は繰り返し若手社員への期待や、働き方を変える担い手としての切望を語る。
その理由を尋ねると、「先輩たちから育ててもらったから」という答えが返ってきた。

個人的な話ですが、と前置きをしたうえで、以下のように語る。


志垣氏
志垣氏
あこがれている先輩がいるんです。
「スーパーポジティブ」な先輩で、誰よりも先に動くし、エネルギッシュな人でした。
私は中途入社なので同期からは遅れをとっているんですが、そんなことは気にせず接して育ててくれました。

私もそういう人になりたい。そうならないと先輩に申し訳ない、という気持ちが根っこにあります。
そのあこがれの先輩がやってくれたことを、自分の後輩たちにもやってあげたい。
それは同じ現場の後輩社員たちだけではなく、会社の若手全員にやってあげたいと思っています。

だからこそ、この現場での実績を使って、SPIDERPLUSを会社の共通ツールとして使っていきたい。
若手社員たちが長く働ける環境を作ってあげたいと考えています。

今後、業界が変わっていくために

志垣氏は建設業は難しい業種だと考えている。一人前になるまでに時間を要するし、世間でも「3K」と形容されて久しい。
若手人材にとっては特に、続けていくことは簡単ではないと語る。
それでも、やはり建設業は「必要な産業」で「やりがいのある仕事」だと言い切る。

こうした考えのもと、今後若手人材が活躍していくために、やりがいを見つけられることの重要さを語る。


志垣氏
志垣氏
若手社員たちが一番やる気を出してくれるのは、仕事のやりがいを見つけた時だと感じています。
私個人は、先輩が介入しなくても、若手社員がほぼ一人で仕事ができている姿をみると、活躍しているなと思います。
自分自身も、そういうときに一日一日が充実していました。
こういう考えのもと、若手社員をできるだけ最前線に立たせてあげたいと考えています。
そのために、デジタルツールの活用はとても良い手段だと考えています。

志垣氏個人は、残業が「大嫌い」だと語る。
若い頃からなるべく残業はしないように効率の良い仕事を心がけて来たし、今でも無駄でしかないと思っているのだと言う。
そのためにも、使えるものはどんどん使っていくべきで、若手社員たちが仕事を辞めることなく継続するならば、「こんなに良いことはない」と語っている。

建設業が元気にならないと日本が元気にならない

SPIDERPLUSを使った取り組みを通して、今後、どんな会社にしていきたいかについて志垣氏に尋ねると「みんながイキイキと仕事をしている会社にしていきたい」という答えが返ってきた。
暗い顔をして仕事をしていても仕方がない、というのがその意味するところである。

志垣氏が見据える未来は、自社だけでなく、建設業界全体にも及ぶ。


志垣氏
志垣氏
効率の良い働き方をして、仕事内容に見合った給料をもらうことができる。
建設業が元気にならないと、日本も元気にならないと思います。
デジタルツールが使えることは業界で働く人達の武器になっていくと思います。
その武器を使って、若手人材たちが全力で働けるような業界になって欲しいと思います。

志垣氏の希求のもと、若手人材が会社、建設業の新たな当たり前を創る取り組みは、まだまだ続くのである。