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【インタビュー】地方建設業も成長しないと生き残ることができない!室蘭のゼネコンがピンチから一転、地域トップクラスに成長できた理由とは?

お話:株式会社内池建設 代表取締役社長 内池 秀敏 様

「このままでは会社が潰れる…」生き残るために会社を成長させることを決断

内池建設の代表取締役社長を務める内池 秀敏氏が先代から家業を継いだのは2006年のこと。
その矢先に、事故に巻き込まれてしまい、スタート早々大きな負債を抱えることになってしまった。

 

「このままだと会社が潰れる…、と思いました。このことが成長しなければいけない、とマインドを切り替えたきっかけです」。

 

室蘭で先代と同じ事業を続けていても市場は縮小している。
日本全体で見ても、少子高齢化は進み建設市場が縮小する以上、成長しないならばせっかく継いだ会社には潰れる未来しかないだろうと思ったのだそうだ。

手痛い失敗から学んだ、「このマーケットでは単純に戦うだけでは勝てない」

先述の出来事を機に、成長の方針を作ることになった。
同じエリアで同じ事業をしていても限界がある、他の企業のように政治力もない。ならば高い付加価値を出していくしかないと考え、札幌に自ら異動した。
ここからトライアンドエラーの日々が始まる。住宅事業、リフォーム事業、不動産事業など立て続けに新規事業を開発、展開した。
その中の一つに大失敗事業となる不動産プラットフォーム事業を立ち上げることになった。ウェブマーケティングビジネスに目を付け、SEOと検索広告に投資をすることになった。

 

1年が経ち、事業を畳むことになった。

 

「資金力のある大手の会社には敵わないし、自分たちなりに資金と労力をかなり投じたと思ってはいたのですが、自社のホームページをキーワードで検索しても、自分自身でもインターネット上で見つけることができなかったのです」。

 

新たな試行錯誤の1年ではあったが、社内からは反発もあり、先代の頃から働いていた社員や、役員の中にも去っていった人がいた。
手痛い失敗に次ぐピンチの瞬間である。

ピンチから一転、高付加価値の実現で地域トップクラスに

そんな中、Webサイトを経由し、倉庫を作って欲しいという問い合わせを受け取った。

 

「広告を出してもいないし、SEOもやっているわけではないのにどうして見つけたのですか」と聞いてみると、『Webで検索したら出て来た』と言われたのです。 調べてみると、北海道室蘭市ではこの分野での競合がほとんどいないことがわかりました。
倉庫はECの市場拡大に伴い、これから拡大していくことが予想できる市場です。これはチャンスだと思いました」。

 

思わぬ形で訪れた高付加価値を出すためのさらなる決断の瞬間だった。
そこで「戦略倉庫」という事業を始めることに決めた。単に事業を始めるだけでは不十分で、さらなる付加価値を出さなくてはならない。
こうして設計施工の両方を自社で担うことに決めたと言う。

 

「設計施工をするには投資が必要です。両方を自社で担うことによって、高利益で工期にも余裕が持てるというメリットがあります。
また、通常ならば設計事務所に問い合わせが行くようなお客様を、自社の設計を売りにするプロモーションを展開することで直接問合せが来る仕組みを作りました」。

 

戦略倉庫事業の試みは成功し、事業は大きな成長をひた走ることになる。
当初はいなかった競合も増えたが、設計施工を両方とも自社で担うための投資は容易なことではない。そのため、内池建設は優位性を維持することができたのであった。
いまでは社長就任当時の2.5倍に売り上げが成長、利益はさらなる増加傾向を見せている。

 

戦略倉庫の取り組みを通じて発見したことが「プロモーションの大切さ」と内池氏は語る。

 

「建設業はBtoBですから意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ、SEOやWebに投資することは重要だと考えています。
ゼネコンはプロモーション、自分たちの価値を伝える力をあまり重要視してこなかったのではないか、と思います。
試行錯誤したこともありましたが、今はこの事業モデルに手ごたえを感じています」。

 

働き方改革実現のために決断した3つの改革

内池氏は働き方改革実現のための、3つの軸にもとづく改革を決意する。
1つ目は設計施工強化、2つ目は評価制度の改革、3つ目がDXである。

設計施工強化

従来は他社と価格競争で仕事を受注する施工のみ担当する仕事がほとんどだった。
競争力は価格のみとなり、決められた工期などの条件が絶対のため、残業や休日出勤など社員に負担をかけることで対応するしかなかった。
設計施工を強化し、設計提案を自社で行うことで工期も設定でき、最初から残業、休日出勤が発生しないよう工期を設定することができる。
設計施工を自社で担うのは理にかなった選択だった、と振り返る。

評価制度の改革

評価制度の改革は働き方改革と不可分の要素である。時間当たりの創出利益で評価する、より戦略的な体制に変更した。
そこでは目標工数も設定し、事務所に怖い所長がいたら怖くて先に帰ることができない習慣から社員を解放できるようにした。
内池氏はこのことを「かなり大きな決断」と振り返り、次のように語る。

 

「建設業の方はわかると思いますが、かなり大きな決断でした。なぜなら1分単位の労働時間管理が必要であり、残業の誤魔化しが効かなくなるからです。ただ、この決断をしたことによって、戦略的な働き方改革を推進することができるようになりました。時間を管理することが主眼になったことで、生産性の高い社員が評価されるようになったのです。
生産性向上の指標として、SPIDERPLUS活用の頻度も重要視しています」。

 

DX

内池建設では、請求書の電子化や、予算管理にもソフトをカスタマイズしている。
請求書の電子化により、仙台や埼玉の拠点では事務員がいなくても業務が回るようになった。
現場での検査のオペレーション構築ではSPIDERPLUSを活用している。

改革にSPIDERPLUSが果たしている価値

内池建設ではSPIDERPLUSを「戦略実行、働き方改革の実現」を目的に重要と位置づけている。
オペレーションを変えていくことは戦略実行のために不可欠なことである。 SPIDERPLUSは同社内ですっかり重要な位置を占めるようになった。

SPIDERPLUSによって、改革されたオペレーションの中には、居場所に縛られることなく情報共有が可能になっていることが挙げられる。
内池建設は室蘭から札幌に進出し、仙台・埼玉にも活動拠点を広げている。
SPIDERPLUSで情報共有ができるため、直接現場に足を運ぶことをせずとも施工の状況を把握することができ、従来は情報共有のために余儀なくされていた移動の工数を最小限に抑えることもできるようになっている。

好循環を生み出し、さらなる成長の先に目指すのは全国展開

今後の展望と課題について聞いてみると、内池氏は次のように語る。

 

「今後は関東をはじめ、全国の主要都市に展開をしていきたいです。そのためには働き方改革の3つの柱も、より進めていかないといけません」。

 

人手不足の深刻さを踏まえた上での展望をこう続けた。

 

「人材の確保はもっと大変になります。関東に進出すれば現地の会社と人材を取り合わないといけなくなります。
現状は北海道から仙台や埼玉に従業員を送っています。その中で、DXを進めながら、評価制度も成り立つことが重要です」。

 

様々な経験を経て、大きな成功を掴み、改革の途上にある内池建設が今後実現したいことについて、内池氏は率直に語った。

 

「建設業で働く人を増やしていきたいです。先ほど全国の主要都市に展開したいとお話しましたが、もちろんそのための人材確保、という理由もあります。しかし根本には、「建設業ってかっこいい、あこがれる」と思ってくれる人を増やしていきたいのです。
父親の働く姿をみて、子どもも「こういう仕事がしたい」と思えるようになったら最高じゃないですか。IT業界は例えばテレビドラマの舞台として取り上げられたり、何かとかっこいい世界のようなイメージが世の中に広がっていますが、建設業はドラマにすらなりませんよね。
改革を進めながら子どもたちがあこがれるような業界にしていきたいのです。弊社で『建築のカッコいい』をテーマとした建築LABOというHPを展開しています。ぜひそちらも確認していただけると有難いです」。

 

以上