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【インタビュー】「安定のために成長を続ける」従業員75名、東京のサブコンが次々と新たなチャレンジを続けられる理由とは

ローヤルエンジニアリングは75名の従業員を擁する豊島区の空調衛生設備業者である。
経営戦略として「技術と親切」を掲げ、大手並みの技術と小回りの効くサービスの提供を30年以上続けている。

現在常務取締役を勤める柴田信裕氏に、同社が次々とチャレンジを続ける秘訣についてお話を伺った。

お話:
株式会社ローヤルエンジニアリング
常務取締役  柴田 信裕様

デジタルツール導入の失敗経験

ローヤルエンジニアリングでは、もともと2017年から現場でデジタルツールを使っていた。
当時は常駐できる現場が少なく現場事務所がないことが多かったので、図面を見たり、メールを確認・送信したりするためにiPadを全社員に支給した。
現場の役に立つと思い、本社主導で全社員に施工管理ツールを導入したが、実際に使っている人は3分の1にも満たなかったという。


柴田氏
柴田氏
若手はともかく、中堅以上の社員は活用度が上がりませんでした。
アナログからの転換が出来ず、結果的に機能の不足があったこともあり、現場での活用が進まず、別のツールを探していました。
その中でSPIDERPLUSを知りました。

SPIDERPLUS導入と、活用浸透の方針転換

初めてデジタルツールを導入した2017年当時、SPIDERPLUSのことは知らなかった。
風量測定機能やCAD連携の機能が使えること、また、元請けの会社がSPIDERPLUSを使っており、同じサーバー内で連携ができることも決め手だったという。


柴田氏
柴田氏
前のツールでの失敗があったので、今度は一度に全現場で一斉スタートするのではなく、使う現場を絞って、徐々に広げていくことにしました。
今では社員同士で勉強会を開いたりして、徐々に活用が広がってきています。

また、若手が先行して使用していましたが、帳票まで一貫して管理しないと効率化につながらないと中堅社員たちも理解しはじめ、今では中堅社員にも活用が広がってきています。

デジタルツール導入は効率化のための一部。
同社の様々な取り組み

同社では、デジタルツールをあくまで作業効率向上のための取り組みの一部と位置付けている。


柴田氏
柴田氏
デジタルツールの導入は作業の効率化のための重要な取り組みですが、あくまで取り組みの一部です。
その他にも、残業時間を削減するための取り組みをいくつか行っています。

同社のその他の取り組みは次の3つである。

1.残業原因を考え、対策を練る

月に一度開催される部課長会では、社員の残業時間リストを見ながら、残業が発生した背景について報告し、対策を考える取り組みが行なわれ、部課長陣の残業に対する意識を変える効果にもつながっている。

2.定時間際の会議開始時刻を変更

17:30や18:30など、定時近くの遅い時間から始める会議は、オンラインツールを利用することで、できるだけ開始時刻を前倒しにするなど、足もとの小さいことから変えていくようにした。

3.SPIDERPLUS活用の分業化

事前準備や帳票をまとめる現場の事務作業は、専門担当者を置いて現場作業から分業化した。

 

失敗もしながら続けて来た残業時間削減の取り組み

同社ではこれまでにも色々な取り組みをしたが、その中には失敗に終わったものもあるという。


柴田氏
柴田氏
現場一工夫運動という取り組みをやっていました。
効率的な働き方の工夫をした現場が発表を行い、良い取り組みをした担当者には金一封を贈呈するなど。
10年くらいはつづけたんですが、出てくる案がマンネリ化したり、案が出てこなくなってしまったので、何年か前に廃止しました。

うまく結果に繋がらなかったことも含めて、まずは様々な取り組みを試してみることによって同業他社と比べても残業時間削減の大きな成果を上げている同社だが、それでもまだ残業時間削減の達成度は60%だという。


柴田氏
柴田氏
まだ当社でできることも20%くらいはあるのではないか、ただし元請けとの仕事の兼ね合い上、どうにもならないことはあります。
しかしこちらからは要望を上げていますし、元請けにも当然そういう意識があるので、これから解消されていくと期待しています。

「まず取り組むこと」が可能な社風の背景には、先代の会長の経営方針を受け継いでいることが挙げられると柴田氏は語る。


柴田氏
柴田氏
先代の会長は、経営戦略をきちんと立てて、そのための投資やチャレンジをどんどんしていこうというスタンスでした。
我々今の経営陣もそれを受け継いでいると思います。
”なぜうちのような小さい会社がここまでやるの?”と思うことはありましたが、その結果として今の成長があり、今もその意思が受け継がれています。

未来を見据えたマインドでの経営は同社の強みだが、「従業員たちもそれについてきてくれるのか?変化を嫌う人はいないのか?」という質問に対して、柴田氏は次のように語る。


柴田氏
柴田氏
当社は、社員に対して隠さずに共有しようという経営スタンスを徹底しています。
一定の理解はしてくれていると感じています。
もちろん、すんなりと理解してもらえることばかりではありませんが、誠実に向き合っていることは伝わっていると感じています。

新しいことを始めるコツは、自ら発信し、周囲を巻き込んでいくこと

一般に、組織の中で新しい取り組みが始まる際には、反対をする社員や腰の重い社員が出てくる。
社員の経営に対する理解度が高い同社でも、それは例外ではないという。


柴田氏
柴田氏
個人的には、新しいことを始めるとき、まずは自分から発信して理解をしてくれる人を見つける。
その人たちと一緒に取り組む中で成功した事例を作り、徐々に残りの人たちを巻き込んで広めていくのが良いと思っています。

例えば今、原価管理システムを入れ替えようとしていますが、部署をまたぐプロジェクトで、部署によってモチベーションの温度差があります。システムを変えれば楽になるのは皆分かっていますが、それが明確にイメージできるようにならないと納得感が出てこないのも理解できます。
なのでまずは問題意識を共有している部署と一緒に始めて、これだけ業務が楽になったという成功事例を作ろうとしています。
そこから徐々に広げていくのが結局はうまくいくと思っています。

今後の経営戦略はSDGsと社会貢献

これまで同様に技術継承をすることで、顧客の信頼に応えられる品質の高い工事をするための人材を増やすことが非常に重要である一方、「SDGsと社会貢献」という別軸の取り組みも同社では重視している。

同社ではサステナブル事業部が創設され、環境負荷を抑えた設計施工や、地域貢献が進もうとしている。


柴田氏
柴田氏
“水を使わない排水技術”を推進しています。
社会貢献を行うことによって、地方自治体とのつながりもできます。そこから案件が生まれたり、事業の成長にもつながっていきます。最近では山形県の西川町と提携を結びました。
水を使わないトイレを現地に作ったり、西川町の学校から生徒児童を東京に招いて、会社見学をしてもらったりもしています。

また、社会貢献として子ども食堂への支援も行っていて、そこに来てくれている子どもたちを西川町での自然体験プログラムに受け入れてもらってもいます。
こうした活動はすぐに結果の出るものではありませんが、5年後に結果が出せるように、中長期的視点で投資を続けています。

目標は全員参加の経営を通した、会社に関わる人すべての自己実現

多角的な取り組みに挑む同社だが、今後の会社としての目標はなんだろうか。


柴田氏
柴田氏
“会社としての足もとの目標は、全員参加の経営を通じ、社員やその家族、協力業者も含めた会社に関わる人全ての人の自己実現です。
みんなが自己実現をするためには、安定した経営を続けなければいけない。
安定した経営をするには、ある程度余裕を持った仕事ができないといけません。
今やっている取り組みも、そのような安定した経営を実現するための手段です。

今は色々と新しいことに取り組んでいますが、最終的には余裕を作るための投資だと考えています。

ローヤルエンジニアリングではまた新しい取り組みが始まっているはずである。