人は財(たから)―技術のプロ育成の出発点にもSPIDER+、その背景とは


2025年10月に九電工から社名を変更したクラフティア。
総合設備業のクラフティアは、研修施設「クラフティアアカデミー」で新入社員を育成し、「人は財(たから)=人財」の理念を体現しています。
教育課程にはSPIDER+の操作研修を体系的に組み込み、現場で即戦力となるスキル習得を目指します。
2025年からは対象を現場支援に特化した技術事務職にも拡大。技術と人の力で未来を切り拓く取り組みについて、育成・研修の現場双方にお聞きしました。
お話: クラフティアアカデミー 人財開発課 電気教育チーム 専任副長 平島 亜弥様、空調管教育チーム 佛原 卓志様
株式会社クラフティア 技術本部 技術管理部 空調管技術管理課 専任部長 則松 喜良 様
集団生活で培うコミュニケーションと現場運用力
平島様と佛原様は、貴社全体の活用推進を担いながら新入社員育成を牽引しておられますが、電気・空調それぞれの分野で新入社員研修の目指すことをお聞かせください。
配属後に最初に任されるのは写真管理で、現場ではSPIDER+を使います。
研修では操作を覚えるだけでなく「なぜ撮るのか」という目的もセットで身につけてもらいます。
タブレットで写真を撮るのは誰にでもできますが、大事なのは「現場の目的に沿った工事写真」を記録できることです。
業務の意義を理解して操作できるようになると、工事全体の効率化に直結します。 電気部門では「工事写真とは何か」という講義を行い、その理解をベースにSPIDER+操作を組み合わせます。
研修期間中にはアカデミー内で撮影から帳票出力までの流れをシミュレーションし、実務に近い形でノウハウを身につけてもらいます。
空調管工事は検査項目が多く、配管・ダクト、空気や水まわりの試験、出来形記録など、残すエビデンスが本当に膨大です。
昔はフィルムカメラを使ったり、Excelでまとめたりもしていましたが、いまは「活用できる形」で記録を残すことが竣工時にも効いてきます。
技術管理部では、なぜスリーブを撮るのか、全体アップや寸法入りはどう撮るか、などの意義と撮影ノウハウを資料化し、SPIDER+で過去現場も参照しながら標準化を進めています。
外構の配管だけで600〜700枚に及ぶこともありますし、配管勾配(1/100)や支持の2mピッチなど、品質としてお客様に示すべきポイントを教えています。
電気工事も同様ですが、後から見えなくなる部分こそエビデンスが重要です。
だからこそ早い段階からSPIDER+を使った教育を通じて、生産性の高い仕事の進め方を身につけてほしいのです。
加えて、今年からは技術事務職も操作研修の対象としています。
現場で撮影こそしませんが、整理や帳票作成でSPIDER+を活用し、現場を後方から支えるためには操作方法や意義について知識を共有していた方がより良いからです。
新入社員たちの印象をお聞かせください。
SPIDER+は、カスタマーサクセスの方に直接レクチャーしてもらって、実務に即した「生きた知識」として身につければ、現場ですぐ活かせると思っています。
昨年からは研修をそれまでの2カ月から5カ月まで延ばして内容も厚くできた結果、現場の先輩社員からは「即戦力が来た」「できる社員が来た」と評価をもらえています。
1年後のフォロー研修でも、SPIDER+のおかげで「写真撮影や取りまとめがすぐできている」という声が上がっています。

自分で使いこなすだけでなく、先輩層への展開役にもなってほしいと考えています。
SPIDER+には様々な機能があり、写真整理だけではなく現場情報を精度高く共有できることを広め、工事全体の生産性を押し上げる「働きかけ役」になることを彼らには期待しています。
空調管部門では要望を受けて、今年からSPIDER+の基礎を現場実習前の5月に、応用編を7月に研修しました。
実習後の報告会でも「SPIDER+を使って対応できた」と新入社員から報告が上がり、現場で戦力化することができました。
来年は各支店のサーバでも使えるようになり、より実践的な内容に踏み込んで、研修側と現場側の双方にメリットが出ることを目指します。
ところで、この「集団生活で学ぶ」体制は、どんな経緯でできたのでしょう。
どんな工事も、一人で黙々とする作業ではなく、誰かと話してお願いをして調整をして、一緒に作り上げていくのです。
ここで過ごす間、4人部屋で大卒生・高卒生と一緒に集団生活をして縦と横のつながりを作っていきます。
最初の2ヶ月間は部門関係なしに部屋を分けます。
その後から部門ごとに部屋を分けてメンバーの入れ替えを行いますが、なるべく色々な人と話して対応できる力をつけることが目的です。
こうした生活の部分からコミュニケーション能力を育むことは、現場のSPIDER+活用を広めてもらうためにも不可欠です。
日常の基本動作は現場運用に直結することが多く、例えば部屋の整理整頓は安全管理そのものです。
専門スキルは経験で伸びていきますが、土台づくりは最初が肝心です。
まずは、挨拶や整理整頓ができ、先輩とうまくコミュニケーションできる、そんな社会人として送り出します。

技術×事務で現場力を底上げ!新入社員研修が目指すこと
研修カリキュラムのうち、特に現場の技術系人材にまつわる基本方針についてお聞かせください。
研修期間は職種によって大きく異なります。
技術・技能系人財については空調管技術部、電気技術部、技術管理部の3部門が配属先での活躍を念頭において、各部門と協議してSPIDER+の操作習得も含めたカリキュラムを編成しています。
新入社員研修の内容にSPIDER+の操作方法を加えた背景を教えてください。
工事ではエビデンスを残すことが重要で、大型現場だと1フロアで約5,000枚、建物全体では6〜7万枚以上にのぼる写真が必要です。
空調管工事の場合は地中から屋上まで広範に撮影が必要なため、SPIDER+で撮影ターゲットを整理しながら記録することが不可欠です。
若手社員には、誰でも現場で迷わず工事写真を撮影できるように育成します。
一方、SPIDER+の操作を通じて「技術のプロ」であることを忘れないでいることも重要です。

2025年からは技術部門に加え事務部門もSPIDER+操作の研修を行うようになったとのことですが、全社活用状況との関わりについてお聞かせください。
一般事務とは異なり、資材の発注・納入管理、協力会社との契約・支払いなど、現場支援に特化した業務を担います。
第1期の2025年は9名が2カ月の研修後、6月から各支店へ配属され、現場のノンコア業務を可能な限り支える想定です。
あわせて、建設業の人手不足を踏まえ、全部門がこうした業務知識を持つ意義も重視しています。
少しでも多くの学生を採用し、協力会社の見本となって安全・品質をリードできるよう教育しています。
現場への第一歩はすぐ目の前、新入社員が語るSPIDER+ですぐ使える実践感

研修を終えた直後にお時間をいただき、ありがとうございます。 SPIDER+の使用感についてどのような印象を受けましたか。
研修では施工図の図面や計算式の公式など、新たに学ぶことが多くて毎日頭を使っています。
現場研修の際、試験や検査の際に開始・終了時刻をSPIDER+で共有できることや、検査そのものから最終的な提出までをSPIDER+ひとつで出来るのはとても便利だと思いました。
研修内容には初めて聞くことがとても多いのですが、SPIDER+を持って現場に出た場合、今回学んだことはすぐに実践出来るのではないかと思っています。
この先様々な現場で活用を重ねながら、より良い方法を見つけていきたいです。
中でも、図面と写真を連携させて記録できることや、営業所などでファイルを共有できること、修正が必要な箇所についても膨大な紙資料から探さずに画面上でひとめで把握できるのは便利だと感じました。
アイコンも大きくて見やすいと思います。
現場で声をかけられた際にどの箇所について話をしているのかもすぐに特定できるのではないかと想像しています。
情報がわかりやすければ、工事で関わっていく複数の人との間でコミュニケーションをしやすくなるのではないかと思っていますし、そういう点を意識してデータを残していくことが大切だと感じています。
研修を終えて、仕事の仕方についての期待と、研修前後での変化についてお聞かせください。
自分自身を心身ともに磨けます。
気持ちも新たに研修に集中できる環境ですし、設備も整っていて、入社したばかりの時と今では自分自身のレベルが上がったと思っています
多様なバックグラウンドを持つ人達とコミュニケーションをとることや、交流できたことに大きな価値を感じています。
まもなく皆さんは現場に配属されますが、今後の抱負をお聞かせください。
それだけの人数が新たに入ったので、自身もその一員として社会に貢献していきたいと思っています。
建設業の中でトップを狙えるよう、貪欲に取り組んでいきたいです。
単にSPIDER+の操作をするだけではなく、現場状況に即してより効率的に仕事を進められる活用方法を見出すことで、戦力になれるように仕事をしていきたいです。
属人化を超えて、九州から未来の現場力を育てる
新入社員研修の取り組みを重ねながら、本質的に目指したいことをお聞かせください。
4週8休は広がりつつあるものの、全国ではまだ道半ばです。
2024年4月からは働き方改革関連法の適用により、月45時間の時間外労働の上限規制も始まりました。
業務の偏りを脱し、誰でも担当できる体制を確立し、時間と場所の制約なく情報にアクセスし、必要なアクションを即時にとることができる環境を作っていきたいです。

若手のように自然に馴染むのは簡単ではないと思います。
だからこそ若い彼らが現場で率先して活用し、検査の効率・精度向上や品質管理への効果も見せて巻き込む、その役割が彼らならきっと果たせるはずだと期待しています。
この取り組みを続けることで、エンゲージメントを引き続き高いものに保っていきたいです。
福岡では大型工事が続き、建設への関心が高まったことも入社にプラスに働いています。
私たちは九州の企業としての個性を強みに、意欲に応える実践的な研修で、人財を現場へ送り出し、配属先はもちろん、地域の建設業にも良い影響を広げていきたいです。






