• 建築
  • 空調衛生設備
  • 電気工事
  • 1500名~
  • 愛知県

個の時短から現場全体の最適へ  共に目指す「より良い働き方」

デジタル帳票サービス「S+Report」は建設現場で使用されるあらゆるExcel帳票をデジタル化させ、S+Reportのプラットフォーム上で作成・記録・判定・出力までを一体化できます。
従来の帳票作成業務では、現地での記録を基に事務所での転記と整形をしていたため、入力の重複や待ち時間が発生していました。

S+Reportは、事前にデスクワークで記入できる項目を分担し、現地で行う「フィールドワーク」では測定・撮影・判定までを一気通貫で完了させます。
結果として、転記作業の削減とリードタイム短縮を実現します。

2025年11月の大型アップデートでは、お望みのExcel帳票(現場で用いる検査記録、チェックリスト 等)のテンプレート化、iPad/PCからのリアルタイム同時編集、図面連動、現地での自動良否判定に対応しました。

本開発は、清水建設株式会社 名古屋支店 設備部とのタイアップなしには実現しませんでした。
「帳票と図面の連動」「現地測定の即時応答」「その場での自動良否判定」「複数名の同時作業」を重点テーマに改善を重ね、フィールドワークとデスクワークを一つのプラットフォームで完結させます。

現場のムダを削減し、早く帰れる現場づくりの要諦と、その背景にある知見と課題認識について、本インタビューで紹介いたします。

清水建設株式会社 名古屋支店 設備部 第1グループ主査
清宮 孝太様

デジタル化の背景 残業の「当たり前」をやめる日

現場のデジタル化に踏み出した経緯についてお聞かせください。

清宮様
清宮様
私は2007年に入社しました。
配属となった現場で経験を積みましたが、若い頃はとにかく「早く帰りたい!」という一心で仕事をしていました。

デジタル推進に関わるようになったのは8年くらい前からです。
ちょうどその頃、建設現場でタブレットが普及し始め、業務スケジュールを移動中の電車の中でタブレットに入力することで移動中もムダにせず、現場に到着次第即座に業務を遂行するように心掛けていました。

デジタル機器やツールは、使い方や考え方次第で効率よく時短できることを実感しました。
そうして自分なりの時短ができるようになると、同僚からも相談されるようになり、日々の取り組みを周囲に知識還元していくようになったのです。

当時のデジタル化推進(以下、DX推進)はどのように行われていたのですか。

清宮様
清宮様
DX推進については、当時はまだ全社的に取り組む前の段階で、各自が工夫を重ねていました。
例えば、iPhoneのペイント機能で撮影した画像データに是正指示を手書き記入し、協力会社へ伝達することも行われていました。
SPIDER+の「指摘管理機能」のいわば疑似指摘のような方法です。

このようにして思いついたことをまずは試していました。

SPIDER+を初めてご覧になった時に、どのような印象を持ちましたか。

清宮様
清宮様
それまで現場で図面・写真・情報伝達など、個別の目的ごとに模索していたことが、一つのサービスとして機能がまとまっていると感じました。
図面にピンを打って事前準備を進めることも、工程が進んでから頻繁に活用する指摘管理も、設備試験記録機能も、紙ベースの仕事の仕方から脱却しようと試行錯誤していた私にはとても魅力的に感じました。
SPIDER+という一つのサービスを活用すればフィールドワークのみで資料をまとめられることを知り、「デジタル化はここまで来たか」と実感しました。

最終的にSPIDER+を選んだのはどのような理由からだったのでしょうか。

清宮様
清宮様
他社のツールも使っていましたが、設備協力会社を巻き込んで効率化するには、彼らと共に施工を進めるための機能が揃っていて、設備工事の現場事情に沿った特徴を捉えているサービスを利用することが大切です。
その機能を有していたのが『SPIDER+』だったということです。

現場全体の生産性を向上させるには、自分たちだけが楽になることを目指すのではなく、現場全体(設備協力会社)と共に併走しながら効率化を図っていくことがとても重要です。

『いつもの帳票』で現場完結 S+Report活用のポイントとは

S+Reportを共同開発・試用することになった決め手をお聞かせください。

清宮様
清宮様
最大の理由は、ビジネスパートナーである設備協力会社様の、竣工間際の逼迫した業務環境を「なんとかして変えたい」と強く感じたことです。

開発にあたっては、協力会社の皆様が弊社の現場だけでなく、どのゼネコンの現場でも汎用的に使えるツールであることを重視しました。
既存のスプレットシートでも活用は可能ですが、入力・修正の履歴(誰がいつ行ったか)や図面との整合性といった「エビデンスの信頼性」には限界があります。
また、属人化しやすい複雑な操作も避けるべきだと考えました。

その点、S+Reportは専門知識がなくても、測定値を入力すれば自動計算・合否判定がその場で即座に行われます。
SPIDER+の図面連携機能に加え、Excelの試運転帳票とも柔軟に連動するため、使い慣れた帳票レイアウトのまま検査が可能です。
これにより、現場でのフィールドワーク(手書き記録)と、夜間のデスクワーク(転記作業)という「二重の業務」から脱却できます。

「信頼性の高い情報を、現場だけで完結させる。」これこそが、本質的な価値だと確信しています。

S+Reportは帳票の見た目をそのままデジタル化できますが、現場で帳票の見た目が同じであることはなぜ重要なのでしょう。

清宮様
清宮様
誰でも初めての帳票より見慣れたレイアウトの帳票の方が記載ミスは減るものだと思います。
また、協力会社を含めた各従事者が望む帳票には、仕事の礎となる品質管理上の重要なポイントや項目が多く散りばめられているものだと思います。

そして、その項目・ポイントが現場で見る帳票に反映されていることは、初めて協業する設備協力会社の方や経験年数の少ない若手社員にとって一種の判断材料となり、迷ったときの手助けとなります。
従来の帳票の利点を生かし、そのビジュアルのままデータを残せるようになったことが『S+Report』の強みです。

S+Reportを活用した現場についてお聞かせください。

清宮様
清宮様
電気・衛生・空調工事を設備協力会社6社の体制で行った現場でS+Reportを活用しました。
S+Reportは同時編集を行うことが可能で、現場内の離れたところにいる者同士が一緒に作業を進めることができます。

現場では、入社5年目前後の若手社員が主体となりオペレーションしました。
初期には戸惑いはあったものの、デスクとフィールドのワークサイクルが見えてくると、移動と手戻りの時間が目に見えて減っていきました。

▲ S+Report導入前後のワークフロー変化(提供:清水建設名古屋支店)

※現場でのS+Report活用シーン

建設の仕事は完成した建物をお客様に引き渡しますが、デジタルツールの開発には常に開発中のものを共に改良していく性質があります。
現場で活用する中でそれぞれの業界の「文化の違い」に戸惑いなどはなかったですか。

清宮様
清宮様
全くなかったわけではありませんが、スパイダープラス様とは随時、課題整理表上で困っている事や改善要望のすべてを可視化して情報共有することで、適宜優先順位の高い内容を改善していくサイクルを共に作っていきました。

2023年にS+Report開発のプロジェクトSSP (※S(Shimz)S(SPIDER+)P(Project)の略) が立ち上がってからは、両社の団結力が増し、本音で議論できるようになりました。

プロダクト化のスピードも何倍も上がったように感じています。

今回のプロジェクトの手法として取り入れたアジャイル開発は、『早く直す仕組み』として我々建設業とのタイアップにも有効であり、私自身にとって大変に勉強になりました。

現場竣工後の社内展開について、構想がおありですか。

清宮様
清宮様
内部向けにマニュアルを用意して、全国へ展開することを考えています。

現場で得たデジタルな知見をプラスワンさせ、会社の標準に昇華させることで、今後の働き方の幅は拡がるはずです。

現場生まれの知恵を標準に押し上げ、信頼を核に働き方を改善し続ける

DXの価値をどこに見ていますか?

清宮様
清宮様
建設はまだロボットだけでは完結できない一品生産の色が濃い産業だと思います。

大量生産が可能な分野と違って、ゼネコンのビル建設はまだまだアナログ的で属人的な作業が発生します。

だからこそ、アナログの中でどこを改革してデジタルに置き換えるのかを、自分たちで見極めて動いていく必要があると考えています。


一方で、建設現場を「3K」ではなく、魅力があって楽しい職場に変えていくために、新4K「給与・休暇・希望・かっこいい」への転換を後押しする国の施策や業界の努力も進んでいます。

大事なのは、良いものは良いと認めた上で、一品生産に不可欠な技術は何か、どこまでをデジタル化できるのかを見極めていくことであると思います。

これからもデジタルと人の技をうまく組み合わせて、建設業に新たなカルチャーを創っていきます。

建設現場は規模に比例して大きな「チーム」で仕事を進める文化です。チームづくりで重視することをお聞かせください。

清宮様
清宮様
信頼です。

S+Reportの開発プロジェクトに重ね合わせてみても、スパイダープラス様と同じ方向を目指し、切磋琢磨できたことがプロダクト化できた大きな要因であると思います。

1つのプロダクト化に向かって同じ方向を目指し、切磋琢磨できたことは、忖度なく本音で議論したことであり、それが信頼を生んだからだと思います。

現場で得た知恵にプラスワンして次の現場を軽くする、そうした「積み上げの文化」を私は育てていきたいと思います。

信頼関係がなければ前に進めません。

S+Reportが大幅アップデートを機に広く使われる中では、きっと新たな課題も出てくるはずですので、引き続き対話をしながら改善を進めていきたいです。

かつて抱えていた「早く帰りたい」という思いは個人のものでしたが、現在は現場全体の課題に姿を変えていますね。 現場のあるべき未来について、どのように考えていますか。

清宮様
清宮様
建設業界全体として若手従事者不足が課題となってはいますが、現場で働く若手社員は皆、逞しく志の高い人たちが多くいます。

力を長く発揮してもらうためにも、長い移動や転記作業のようなムダを減らし、仕事と私生活のバランスを保てる環境づくりが大切だと考えています。

そのためには、一人が頑張ること(属人化)になるべく依存せず、チームで結果を再現できる方法に置き換えることです。

さらに協力会社を含めた生産プロセスを構築し、手戻りを減らす方法を取り入れれば、業界全体の効率化が図れます。

結果として業界全体が早く帰れる日が増え、集中すべき場面に力を配分できます。

このように仕組みを改善することで、志が高く逞しい人ほどさらに力を発揮しやすくなるはずです。

 

働き方の正解は一つではありません。体力や経験、役割に応じて最適は変わります。

誰も『置いてけぼり』にせず、現場の苦労をプラスワンの工夫で次の現場へ引き継ぐことの積み重ねが、志ある人たちが長く活躍できる働き方につながると考えています。

仕事では時に辛いこともありますが、その先には必ず楽しみが待っているはずです。

仕組みの整備と同時に、一人ひとりがより良いマインドセットを持つことも重視しています。

DX推進の傍らで、仕組み・評価の両面をより良くサポートし、魅力ある働き方を目指してこれからも取り組みを続けていきます。

ありがとうございました。