仕上検査機能で1日あたり3〜4時間の効率化!導入1年未満で工事部の80%が利用する背景とは
大阪市住吉区を本拠地とする松本組様は、創業から100年を超える歴史を持ち、特にマンション施工の実績が豊富です。「資産価値の高い建物を提供する」ことを、企業理念の1つにも掲げている同社では、竣工時の検査を特に重要なものと位置づけて取り組んでいます。検査そのものを簡略化はせずとも、デジタル導入によって、1日あたりの労務時間を短縮することや、DX推進による効率化が本質的に目指すこととは、一体何なのか。品質管理を引っ張る柴田様にお話を伺いました。
お話:柴田 裕貴様(品質管理室 室長補佐)
※インタビューはマスクを着用して行なわれました。写真撮影時のみマスクを外しています。
仕上検査を重視、建築オプションパックつきで導入した背景
―松本組様では昨年(2021年)夏にSPIDERPLUSを導入しましたが、その前からデジタル活用自体は既にあったのでしょうか?
柴田様(以下S):以前は特定の検査で使っていたものが複数ありました。
工事の中では、仕上検査など、竣工時の検査をとても重要視していて、有資格者や、現場代理人の経験が豊富な人間を選抜して現場に送り込んでいます。マンション1部屋あたり、現地でチェックするのに大体3〜4時間かかります。
人数を投入して1班あたり5人で行なうとしても指摘数は1部屋あたり200〜300項目出ます。そうすると検査そのものだけでも1日最大2部屋見るのがやっとです。
朝から夜まで検査をして、その後事務作業を行なうとあっという間に遅い時間になってしまっていたのです。
―長時間労働の課題といえば、2024年の4月からは建設業界でも働き方改革関連法案が改正されて施行されますが、それに対しても意識があったのでしょうか。
S:はい。2024年問題も会社として効率化の背景にあったことです。もともと社員にはAndroidのスマートフォンを支給していたのですが、効率を考えてiPhoneの支給に切り替えることになりました。
―仕上検査はSPIDERPLUSのオプション機能の1つではありますが、当初からオプションパックつきで導入となったのですね。
S:そうです。長時間労働が課題であった一方で、仕上検査そのものを省略するというわけにはいきません。検査それ自体を含めて1日あたりの労働時間が長時間化するのに対して、デジタル導入で解決することにしたのです。
会社で重視している仕上検査を高いクオリティで進めていくことができそうなのに加えて、別のサービスで行なっていた配筋検査も、SPIDERPLUSならば1つのアプリで済むので導入を決めました。
―実際に導入をしてみて、どんな手応えがありましたか。
S:仕上検査を行なう日の労働時間が3〜4時間は減りました。以前ならば仕上検査を1日がかりで終えてから1部屋あたり200〜300にもなる検査項目の仕分け作業をしなければならなかったのを、仕上検査機能によって大幅に削減することができるようになりました。
それから、以前は検査ごとに違うサービスを使っていたため、現場で見るべきものが複数にわたっていましたが、SPIDERPLUSならば1つのアプリで作業が可能な上に豆図を出すことも出来るので、現場で検査をする時の使い勝手も良いです。
1年足らずで工事部の利用80%、スピード浸透の背景と現場を支える仕組み
―貴社は昨年夏に導入したばかりですが、社内での浸透度合いが工事部門で80%ほどと聞いています。どのような取り組みでここまで素早い浸透に至っているのでしょうか。
S:月1回、工事部の会議を行なっています。そこで現場の使用状況を把握するようにしています。あとは、社内のグループウェアにはマニュアルを載せていて、困った時はまずはどこを見ればよいかを明らかにすることで慣れていける体制を作っています。
ー頼るチャネルを複数設けているのですね。
S:そうですね。現場では若手からベテランまで、色々な人が働いています。経験が長くなると従来の方法から変わるということをあまり歓迎しなくなることがあります。個々のリテラシーというよりは、新しいことに取り組むことへの個人差の問題です。そういう人たちに対して、効率化を上から押し付けるだけではうまくいきません。
オンライン、オフラインの両方でコミュニケーションを密にして、効率よく働くことをお互いが理解し、納得してもらった上で進めていけるように取り組んでいます。
ー様々な単位で現場を支えることが浸透の背景にあるということですね。
S:品質管理の部門では全部の現場に足を運んで、定期的にヒアリングを行なっています。これは、主に若手人材の声を集めることを目的にしています。若い人たちは思っていることがあっても、どうしても意見を上げるのは簡単ではありません。
―若手の声を大切にしているのですね。
S:そうです。長期的な会社の未来を考えると、将来会社を支えて引っ張ってくれるのは彼らです。どうしたら自分たちの業務が効率的になるか、積極的に提案してもらうようにしています。提案するためには、当然彼ら自身がアンテナを張る必要が出てきます。発言しやすくなるような機会として、グループ単位でヒアリングを行なったり、グループウェアを通じて相談してもらったり、コミュニケーションの機会を維持するようにしています。
―若手の方たちは、タブレットの操作に慣れるのも早いでしょうか。
S:そういう傾向があると思っています。若手人材がSPIDERPLUSの操作に長けていれば、ベテラン人材は当然彼らに教えてもらうことになります。こうした積み重ねは若手人材にとって向上心を刺激する要因にもなっていると思っています。
現場は個々人の寄せ集めではなく、1つのチームです。SPIDERPLUSを介してコミュニケーションが生まれやすくなることはもう1つの効果だと捉えています。
―こうした取り組みが実を結んでのスピード浸透なのですね。
S:そうですね。現場の努力もあって、普及をさせるという目標はほぼ達成できたと思っています。今後の課題はさらに使いこなして「応用していくこと」だと考えています。
―オプション検査を使う際の事前準備については、どのように受け止めていますか。
S:事前準備をすることによって、現場作業で抜け漏れを防ぐことが出来ます。たとえば配筋検査を行なう場合は、事前にピンを立てる準備が必要ですが、実際に現場の様子を見ることによって、その場でピンを足したほうがいい箇所があることに気づくこともできます。
現場は時々刻々変わっていきますから、写真の撮り漏れはおおごとです。事前の準備は実際に撮る箇所を記号化することですが、現場に行けば記号の意味することを実際に見ることができます。そうすることを積み重ねると、図面と実際の様子を何度も見比べながらノウハウを蓄積することにも繋がります。
DX推進で見えてくる、業務効率化の本質的な目的とは
―お話を伺っていると、業務効率化というのは目の前の作業をラクにする以外に長期的に見据えて取り組むことによってもたらされるのだと気づかされますね。
S:そうですね。たとえば配筋検査で写真を撮ってくることを依頼すると、若い方は「写真を撮る」ことを主にしてしまうことも少なくありません。本来は正しく配置されているか、など、目的に沿って写真を撮るという手段が使われますよね。一方で若手人材は、大きな建物を作るという工程の中で、限られた部分にだけ従事することが少なくないため、作業の本質的な目的を理解したり、工期の全体像を把握した上で作業を行なうのが難しい状況に置かれがちです。
SPIDERPLUSを使うことによって検査の事前準備から実際の検査まで、個々の作業が目的本位に紐付いていき、トータルに手戻りを少なくしていくことが、彼らにとっては長期的に物事を捉えることにも繋がると考えています。
―労務時間が減ったことで、改めて本質的な課題が見えてくるのですね。
S:そうです。業務の効率化を図るのは、単に時間が減ったから早く帰ることができて休めてラクになるというだけではないと思います。SPIDERPLUSならば1つのアプリの中に図面も資料も写真もすべて入っていますよね。個々の段取りや手間を減らしたら、アプリの中に入っている情報と現場を何度も見比べて、建物を作るための知識を身につけることに時間を割くことができるようになります。効率化の価値の1つはそういうところにあると思っています。
ーありがとうございました。
〜IT導入補助金について〜
経済産業省 中小企業庁では、IT自社の課題やニーズにあったITツールを導入する際の経費を補助するIT導入補助金の制度を設けています。SPIDERPLUSの利用費やサービス導入費を最大150万円の交付を受けて導入することができます。
この制度の特徴の1つとして、企業(補助事業者)側とツールの提供側が一緒に申請手続を行なうことが挙げられます。つまりスパイダープラスとお客様企業が共同で手続きを行ないます。
松本組様のご担当者に訊いてみました。
節税対策も視野に入れて、IT導入補助金を利用して、SPIDERPLUSの導入をすることになりました。申請のためにはそれぞれの段階で書類など、準備するものがあるのですが、
申請準備に1日弱、申請書類のベース作りは丸1日、最終審査書類の作成にはトータルで3〜4日かかったと記憶しています。
申請書類の中でSPIDERPLUSの導入効果について書く箇所があるのですが、決算説明資料に掲載されている内容を役立てています。スパイダープラスの担当者にはずいぶん助けてもらいました。
こちらのページでも制度の利用や仕組みについて説明しています。