• 空調衛生設備
  • ~1500名
  • 群馬県

工事部門での導入8割を超えて見据える、本質的な効率化の課題とは

前橋市の株式会社ヤマト様は、地元の教育・学術施設から商業施設、病院、工場、さらには全国的な知名度と格式を誇る建物に至るまで、関東甲信越地方を中心に幅広い施工実績をお持ちです。
加えて、地域を対象とした文化活動にも熱心で、社屋に足を踏み入れると受付横のギャラリーでは展覧会が行なわれ、社内の至る所でも、油絵から抽象画に至るまで、多様な作品が飾られています。紙からタブレットへ、初めてのICT導入となった経緯から、2022年2月時点で需要が急増している工事でのSPIDERPLUS活用まで、お話を伺いました。


お話
瀧野亮 様(冷熱部 工事統括部長代理、文中ではT)
岩﨑健 様(技術部 主事、文中ではI)
宮野翼 様(技術部品質管理課 主査、文中ではM)

※インタビューはマスク着用で行なわれました。撮影時のみマスクを外しています。
 文中、サービス名称を「SPIDERPLUS」、社名は「スパイダープラス」とそれぞれ表記しています。

初の全社的ICT導入となった背景、図面や帳票作成に関する課題

ー株式会社ヤマト様では、SPIDERPLUSが初の全社的なICT導入だったとのことですね。

T:以前は現場での施工管理業務は紙中心で進められていました。PCが業務の中心でしたが、CADや施工管理書類は印刷したものを持って現場管理をするスタイルでした。

ー導入の決め手になったのはどのような点でしたか。
T:写真の添付から帳票出力までが手軽に見えたこと、検査から帳票出力までを1つのアプリで済ませることが可能なことも魅力でした。特に、帳票は写真の枚数も多く、図面との整合性の問題もあり、何かと時間がかかりがちです。
I:使い勝手が良さそうだということに加えて、シェアが高いことも良いと感じました。

ー実際に普段現場で使ってみて、どんなふうに感じていらっしゃいますか。
M:楽になったと感じています。7年ほどこの仕事をしていますが、以前はA1の紙図面を持ち運ぶのが大変でした。SPIDERPLUSになってからはタブレットで管理できるようになり、画面のサイズも図面を見るのに非常に見やすいと感じています。出入りしている現場だと、多いところでは15名程の監督間で情報共有をしていかなくてはなりませんが、クラウドを介して便利に行なうことが出来ています。

【ポイント1】大量の紙図面からタブレット1つに!

T:施工箇所に写真を紐付ける機能があるお陰で、どの箇所がどんな風になっているかを明確に共有することが出来ます。

空調オプションつきで導入を決めた背景、コロナ禍特有の需要も

ー貴社では空調オプションも初期の段階からご利用ですね。当初からオプションも付けて導入することをお考えでしたか。
I:労務削減になる、と考えて、当初から導入しています。定量的な把握こそしていないですが、作業の手間が3分の1〜大きいものだと半分程になったと実感しています。また、検査の実施も従来は2人必要だったものを1人で可能になりました。

T:課題はオプションパックも入れている現場がまだ少ないことと、検査の頻度によっては使うことがとても少ないものがあることです。基本機能ならば高頻度で使いますから毎日の業務を通じて覚えていくことが出来ますが、年に1回だけの検査でしか使わない機能の場合、使い方に慣れた頃には「また来年」となってしまうのです。

ーそれは悩ましいですね。ちなみに空調オプションには風量測定機能など、コロナ禍で注目を集めるものもありますが、日頃の業務でも需要が増えていると感じますか。
T:そうですね。例えば病院などから換気量を増やしたいというご要望のもと、検査をして工事、というケースが増えています。情勢柄、なるべく少人数で現場に行って検査を行ないますが、風量測定機能は1人でスポット検査を行なうことが出来ますね。検査結果を受けて換気量を増やすための工事に移っていきます。

【ポイント2】風量測定オプションで検査を1人でも実施可能に。

ー空調オプションの他の機能でメリットを感じるものはありますか。
T:圧力検査機能ですね。SPIDERPLUSの導入前はアナログな方法で行なっていました。かかっている圧力がわかるように、圧力計写真を検査開始時と終了時に瞬間的に撮影していました。
最近利用を始めた圧力試験機機能だと、加圧している間、継続的に加圧状態や温度がログとして残ることで精度の高いものになりました。
一方、現場で計器をセットするなど、一時的に手間が発生していくことについてはコストバランスも含めて対策を考えていく必要があります。

ー基本機能、オプション機能ともども、使い方の習得に取り組んでいることはありますか。
M:はじめは使いながら体得していくのみでしたが、今はマニュアルやウェブの勉強会も充実していて便利です。

I:会社全体として勉強会への参加を進めていき、短時間で効果的に覚えることを目指すのは課題の1つです。

2年で工事部門の導入率が8割を超えて見えてきた現場の課題

ー2022年2月時点で、会社全体の浸透率はどのくらいでしょうか。
T:2年ほど前に導入初期段階で機能、使い勝手がニーズにマッチし、そこから導入率は上がっています。現在の工事部門での導入率は8割近くではありますが、実際の効果を生む利用率はまだ低いもので、本当の意味での効率化は今後の課題と考えています。
使い方の工夫次第で、労務時間の削減に期待が出来ると考えており、効率の良い使い方についても啓発する取り組みをしています。ただし、まだ全社的に統一したものがありません。改正法の施行も迫っていますから、取り組むべき時期に来ていると感じています。

ー本当の意味での効率化、ということですが、現場業務においてもまだ課題と感じていることがおありですか。
T:SPIDERPLUSは便利に使うことができ、従来ならば時間をかけて知見を育成する取り組みの末に身につけることも、機械的にそう悪くないところまで持っていくことができます。例えば写真帳票などです。ただし、仕事そのものへの理解度が低いと、形だけの写真撮影や管理、帳票作成になってしまいます。本質理解が現場のOJT教育の要です。一方で教えるための時間を割くのは難しいことです。
I:人材育成やデジタル推進によって魅力的な会社にしていくことで人材の獲得や定着といった課題に役立てていくことが出来るのではないかと考えています。

ー現場、会社全体とそれぞれに課題意識がおありということですが、今後建設DXの推進によってさらに改善していきたいことを教えてください。

T:現場業務としては、施工時の加工、品質、出来高管理から、竣工後の運用データまで一気通貫となることを目指しています。現場の施工を出来る限りフロントローディング化する取り組みを行なっていますが、全体工程の遅延や、変更、物流や現場状況など様々な要因によって効率化が進まないケースもまだ多いです。建設全体でのDX化が必須です。

I:コミュニケーション精度の向上も課題です。建設業に携わる人が減っていくという課題を見据えて、若手人材への教育や、業務の改善によって施工管理業務の人たちが同じベクトルで取り組んでいくことができれば、問題点の改善に繋げていけると考え、危機感を持って取り組んでいます。

ーありがとうございました。