現場の荷物・人数・残業時間を削減。創業100年を超えるゼネコンがDXで実現する効率化、長期的な価値形成の取り組み
2021年で創業112年となる西田工業様は京都、福知山を拠点に、関西方面に盤石な営業基盤を持つ総合建設会社です。現在の西田社長で6代目となる同社は、『死角となる分野を設けない』というのを経営指針として土木も建築も手掛け、戸建てリフォームから大規模な工場建設、道路工事までオールラウンドに実績をお持ちです。
今回は西田吉宏社長(写真中央、本文中はN)、建築部を統括する福田隆雄氏(写真右手、本文中はF)、入社時から現場で SPIDERPLUS を活用している多留雄也氏(写真左手、本文中はT)の3名にお話を伺い、導入の背景から同社が見出す建設業の価値形成に至るまで広く語っていただきました。
創業112年。「何でも作る」プロを育て、現場監督の地位向上への思い
N:当社の歴史は古く、福知山で創業して今年(2021年)で112年を迎えます。先代役員幹部は当社建築事業の幅を「犬小屋から摩天楼まで」と表現していたほどです。建設業界は時代によってニーズやトレンドが変化します。ある特定の分野に特化することは、強みを作ると同時にそのほかの分野に弱点を作ることになってしまいます。顧客の要望に応え続け、長い付き合いをするためには、自社で様々な案件にくまなく対応できる、つまり何でも作ることができる技術力が必要だと思っています。
現在、当社に在籍する社員は96名。建築現場を指揮する現場監督は30名でそのうち28名は新卒で入社した社員なので、社員の定着率は非常に高い傾向にあります。それは、私たち経営陣が建設現場で働く社員を、ただの現場員とは思っておらず、「ものづくり」の日本代表だと思っていることに起因していると思います。私たちは建設業をかっこいい業種と位置づけて、現場監督の地位向上を目指しているのです。
大量の紙、現場の携行物、SPIDERPLUSに見出した期待
F:仕事が増えると書類の整理や雑務も多くなります。特に大量の図面管理には一定の労力が必要です。数年前から紙の書類をPDF化して省スペースを図っているものの、いまだに書庫には大量の図面があふれています。居室のスペースを圧迫するだけでなく、必要な図面を探すにも一苦労ですし、PDFのデータは会社のファイルサーバーに入っているため、いつでもどこでも引き出せるというわけではありません。
そんな状況に課題を感じていた時、関西のゼネコン技術者で構成する研究会に参加し、そこで SPIDERPLUS を知りました。
興味を惹かれた機能が3つありました。電子黒板、図面管理、写真整理です。
現場では黒板やホワイトボードを使っていました。直接手書きしたり、現場員がCADで書いた略図を印刷し貼り付けたり、伸縮式の棒がついた手持ちのホワイトボードを利用することもありました。略図を準備する段取りや、略図を印刷する紙は使い捨てですからコストが発生します。手書きだと見やすさに個人差が出てきてしまったり、雨や風の影響も受けます。現場は荷物が多くなりがちですが、黒板を持つこと自体も負担になりますし、写真を撮り忘れた場合の対応や、何より置き忘れるということもつきものだったのです。
写真整理の滞りも大きな課題でした。現場において、特に検査前には図面や写真の整理に長時間を要します。場合によっては応援の作業員まで必要になることもあります。これでは現場監督たちの労働環境は改善していきません。私はSPIDERPLUSの導入を検討するために、すぐに問い合わせ、コストや作業量の負荷軽減率について詳しいことを担当の方に聞きました。自分でも熟考を重ねて、費用対効果が高いと判断し導入を決めました。先ほど挙げた課題以外にも検査機能にも同じくらい期待を持っていたのと、あとはこうした新しいものを導入することで若手社員の動機づけにもなるだろうと考えました。2017年の2月のことです。2アカウントからのスタートでした。
荷物と段取りの削減で現場での立ち回りがラクに。予想外の効果も
T:私が入社したのは2017年4月で、その頃にはすでに SPIDERPLUS が導入されていたので、このツールを使う前までの苦労は実はわかりません(笑)。けれども先輩職員からは「黒板の記入や写真の整理などが楽になり、格段に便利になった」という声を聞いていました。図面に記帳するスタッフ、検査員、現場監督など、検査には多くの関係者が立ち会います。まだ社内であまり SPIDERPLUS が浸透していなかった頃は、小黒板にチョーク、撮影用のデジカメに図面など多くの荷物を脇に抱え、現場を歩き回り、検査時にはそれらを使いこなさなくてはいけなかったのです。検査現場ではたくさんの指示が飛び交います。そうした状況下で多くの荷物を持つのは負担でした。SPIDERPLUSに切り替えてからは、荷物はタブレットのみになり、身軽になったことが嬉しかったし、楽でした。
さらに SPIDERPLUS の電子小黒板を使うことで、現場の人員削減もできました。今まで3名で行っていた検査を2名で出来るようになったのです。今まではスタッフの手配だけでなく、荷物の持ち忘れを心配していましたが、SPIDERPLUSの入ったタブレットさえあればいいので検査作業はとても楽になりました。
F:SPIDERPLUSを2アカウントから使い始めましたが、実際現場に導入すると現場監督の残業時間が目に見えて減りました。月に30,000円のコストダウン(※西田工業の試算による)になったのです。写真や図面などの基本機能によるところが大半ですが、導入当時に魅力を感じていた検査機能も期待通りに残業時間の削減につながっています。
当初は他社のサービスとも併用していましたが、SPIDERPLUSは作業効率の良さに加えてアップデートの頻度が多いことから、さらに機能が充実するであろうと予測し、建築部全員分の導入を決めました。現場ではベテラン社員が若手社員にSPIDERPLUSの使い方を教えてノウハウを共有するなど、当初予想していなかった社員同士のコミュニケーションが生まれたのも嬉しい誤算でした。
ICTで「カッコいい」仕事を実現させ、長期的な業界の価値を形成を目指す
N:これまで世間が持つ現場監督のイメージはあまり良くなかったかもしれません。ですが、SPIDERPLUSの導入で「現場の仕事はカッコいい」というイメージが社内に出来上がっていると思います。
ICTの導入やSaaSの活用を積極的に取り入れることで建築業のイメージが向上し、当社の採用活動にも有利に働くと期待しています。
また、経営者として従業員のストレスの軽減は最優先課題と捉えていて、それがシステムの導入によって解消できるのであれば、コストを掛けても導入する価値が充分にあると思います。
当社は作業効率化を含めた建設業のDX化を進めています。現在はSPIDERPLUSの導入と同時にRPA(※ロボティック・プロセス・オートメーション)も推し進めています。働く環境を最先端でかっこいいものにしたいんです。ものづくりを行なう現場監督がかっこよくなければ、人は集まりません。当社だけでなく業界全体で現場監督の地位を向上させることが、今後の建設業界のよりよい未来を創ると思っています。
建設業だからこそできることは多くあります。地元のゼネコンだからこそ知っている情報があり、また、解決しなくてはいけない課題なども熟知しているからです。
建設会社は地元と強固なコネクションを持っているため地域とともに賑わいを作りだすことも可能なのです。そのような地域や関係者を巻き込んで地域の活性化につながる事業を行うためにも本業である建築業はスマートな仕事でなくてはいけません。SPIDERPLUS はその建設業の可能性を切り拓くツールになっていると感じています。