若手が牽引するDX、効率化と知見の両輪で現場進化を目指す


沖縄県浦添市を本拠地とする屋部土建は、1933年創業の総合建設企業です。
道路・橋梁・港湾・建築など公共・民間の幅広い実績を持ち、DX推進にも積極的に取り組んでいます。
今回は、DXを牽引する若手社員を中心に、取り組みの特徴とさらなる生産性向上を目指す背景を伺いました。
お話:株式会社屋部土建
知念 隼人 様、知念 珠音 様、長嶺 力 様(建築工事部) 小渡 真一郎 様(業務改革推進室 室長)
若手ドリブンで始まった現場DXの背景
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。 はじめに皆様のご経験、役割について教えてください。
現在の活用概況をお聞かせください。
お互いに操作方法を勉強しながら使い、新入社員が入ったらその都度タブレットを支給して勉強会を開催して早期に使いこなせるよう支援します。
というのも、彼らは日頃からさまざまな機器の操作に慣れており、新しいツールの習得もスムーズに進むだろうと見込んでいたからです。
その習得の早さは現場での仕事の進め方そのものを変えていく原動力になり、若い世代が率先して新しい働き方を引っ張り、周囲に良い影響を広げていくことができるのではないかと考えました。
実際に効率化や省力化だけでなく、若手社員が主体的に学び、考え、動く文化が根付くきっかけにもなったと思っています。

図面、写真、指摘事項もシームレスに共有して「即わかる現場」づくり
現場での主な活用方法をお聞かせください。
また、黒板も事前に準備することができるので、コンクリートの打設など、工程が多いときに役立ちます。
書類作成の際には写真を選んでダウンロードすると書類形式になっているので誰でもできるところがとてもいい所です。
工事写真の撮影では、事前に図面上にアイコンを設置することによって撮り忘れを防ぐことができています。
監理検査では、設計監理から指摘を受けた場合、指摘箇所を図面にアイコンで示し対応前後の写真を紐づけて報告します。
竣工検査でも是正すべきことが出てきます。
仕上検査機能を使うことで担当する協力業者ごとに是正指示を効率的に出せますが、該当箇所は業者ごとに色分けしたアイコンを図面上に置き、タブレットを持った社員が現場エリアごとに対応していきます。
現在担当している工事は事務所から現場までの距離が徒歩15分ほどです。
SPIDERPLUSで図面や資料を表示できるので、職人さんに声をかけられた場合は取りに戻ることなくその場で対応できています。
協力会社に指摘を伝えるときにも活用して、施工の是正事項を写真を伴って明確に伝えることができます。
社内に周知事項がある際もクラウドを介して効率的に情報を共有できます。
こうした特徴のおかげで現場に来なくても工事状況や施工の対応状況が分かります。
施工管理でSPIDERPLUSを活用することで、単独の現場、複数の現場それぞれでのメリットをお聞かせください。
万が一書き間違えてもすぐに直せますし、そのまま設計監理に見せられるので、対応が早くて効率的です。
それから、SPIDERPLUSはアイコンの色を変えられるので、業者別や是正・パトロールなど、目的によって色分けしています。
図面の中で開くべき箇所もすぐ特定できるので、改善も進めやすいです。
図面が手元にない場合や急な質問を受けた際も、その場で表示して説明可能です。
工事写真は全体共有で代理人も確認できます。
そこから施工内容の指摘や是正対応がスムーズに行われると、工事が効率的に進むだけではなく、私たち若手社員にとってはそのまま生きた知見を得ることにもなります。
分からないことが発生した場合も、図面の対応箇所のスクリーンショットを撮って、すぐ上長に確認しています。
その場で上司に見せて確認してもらいながら覚えていきました。
鉄筋写真も、先輩や上司たちの過去の記録を参考にしながら実践するうちにコツを掴んでいきました。
例えば柱の鉄筋を撮影する際は全本数が写っているか、なども意識してノウハウを身に着けていったのです。

安全管理に関することや汚れの有無なども工事写真から読み取ることができます。
撮影からなるべく時間が経たないうちにチェックして撮り直しまで回し、単に写真を撮るだけではなく、工事全体を違った視点からより良くするための助言を行います。
記録を残す前に一度目を通して除外対象を洗い出すのも全体の効率をよくするコツです。
工種によっては撮影できるタイミングが限られることもあるので、そこも意識しています。
60%の天井を破る—管理・代理人も含めた全員主役の運用設計
SPIDERPLUS導入後の活用浸透をはかるために、どのようなことをしていますか。
元は現場をパトロールしあったり、特殊工法なども学びあったりしながらノウハウを平準化するためのものでした。
その中にSPIDERPLUSの操作方法や活用事例なども加えていきました。

若手会は若手社員同士のコミュニケーションを促し、良好な関係構築も目的としている
現在の活用状況について、自己評価はどのぐらいでしょうか。
若手会だけではなく、横のつながりを活かして教えあったり、スパイダープラスの担当者ともコミュニケーションを重ねたりして、活用状況をデータで確認することもできています。
管理者や代理人など、上位層の活用にはまだポテンシャルがあり、そこも含めると現在の自己評価は60%ほどです。
彼らは若手社員とは異なり、現場での写真管理こそしませんが、工事進捗をさらに効率的にするための活用方法を模索したり、検査立ち会いなどでも役立てたりすることで、この先勉強会などを重ねながら会社全体のよりよい使い方を確立していきたいです。

若手社員の皆様にとって、さらに効率化を進めるための使い方のアイディアはありますか。
連絡や報告は電話やチャットツールでも可能ですが、SPIDERPLUSの活用方法について、社内全体でノウハウを引き上げていくことができれば、現場の任意の部分について一度の閲覧で多くのことを具体的に知ることができるようになり、お互いに効率化できると思います。
もしもこの先、指摘管理機能を活用していくことができれば、上長や現場所長たちが場所に縛られることなくさらに明確な内容の情報共有が可能になり、効率的に工事を進められるのではないかと考えています。
効率化が時間を生み、時間が価値を生む—学習できる現場へ
貴社では施工にとどまらず、全社的なDX推進を15年以上前から積極的に推進していらっしゃいます。
今後本質的に目指したいことについてお聞かせください。
入社5年目くらいまでの社員は、彼らの先輩たちとは異なり、紙ベースの仕事を経験していません。
その分彼らとその上の世代たちとでは、業務効率化と一言で表しても見えていることに違いがあると思います。
ただし、共通して感じるメリットとして、デジタルツールの活用で節約できた時間を他のことに使えることが挙げられます。
当社に限らず建設業はどこも人手不足問題に直面していて、人材育成に割ける時間も限られています。
だからといってそれを言い訳にするのではなく、限りある条件下で施工の質をより良くしていくためにできることは、まだまだあるはずです。 自主的に行われていることではありますが、雑務から開放された時間をSPIDERPLUSに残っている過去の現場データを見て学ぶなど、今後の活用方法次第で一人ひとりが知見をひきあげていくことの生む価値をいくらでも大きくしていけると思います。






