建築は誰かの人生を背負う仕事。DXで想いと根拠をつなぐ現場より


徳里産業は、沖縄県内で公共・商業施設から一般住宅までを手がける、地元に根ざした建築会社です。
とある公共施設の建築工事現場ではSPIDER+活用による効率化が進んでいます。
その背景には「建築の仕事は、誰かの人生を背負うもの。そのために我々は想いと根拠のバトンを繋いで質の高い仕事を進めなくてはならない」と語る思想があります。
現場を訪ねて、活用の実際から背景思想に至るまでお話を伺いました。
お話 株式会社徳里産業
知花 亮太 様(工事部 課長)
福山 由 様(工事部)
宮城 克周(工事部)
SPIDER+で図面の限界を越える現場コミュニケーション
本日は工事の進行中にも関わらずお時間を頂き、ありがとうございます。
皆様の役割について教えてください。
協力業者や施主とのコミュニケーションに加えて現場のDX推進のために会社と交渉したり、それぞれの業務内容を把握しながら適宜フォローもしています。
SPIDER+を活用した各種検査や、書類全般、例えば施工計画書や資材承諾、検査に関する書類なども担当しています。
工事を次の段階に引き継ぐためにSPIDER+を現場に持ちだし、是正などのコミュニケーションをスムーズに進めるために保存された情報を活用しています。
工事写真に加えて、福山さんが検査を実施している際には後ろから記録写真の撮影も行います。
宮城様はこちらの現場で17,000枚以上の写真を撮影したそうですが、活用方法をどのように習得していきましたか。
単に写真を撮るだけではなく、工事全体としてはその先に仕事があることを意識しながら撮るように変わっていきました。
また、SPIDER+は現場に持っていくものをタブレット1つに済ませることができるため、安全行動を取りながら撮影できます。

現場では自分で考えることと、誰かに判断をあおぐべきこととがありますが、彼はその区別をつけることができる人です。
今では撮影したものを監理者に彼自身が確認していることから、私の写真確認に関する回数が削減できています。
写真を見せながら話せるので、言葉にするのが難しいことも明確に伝達できるのでお互いにコミュニケーションしやすくなるのです。
福山様は書類全般をご担当とのことですが、SPIDER+の帳票作成機能についてどのような工夫をしていますか。
図面上で該当箇所を撮影し、検査データを取得できるだけでも十分な効率化にはなりますが、そこからの書類取りまとめまで省力化できれば、撮影した写真や紐づけた情報がそのまま書式に反映され、作業効率は飛躍的に向上します。
もちろん、完全にゼロから作成するのは手間がかかります。
ただ、SPIDER+のデフォルト帳票があったからこそ、それを土台に必要な書式を作ろうという判断もできました。
現在の活用状況を評価すると、現在の状況はいくらでしょうか。
検査内容の伝達でも例えば誰かが全体を横断して確認し、その結果がこちらに回ってきて提出までつながる運用にできれば、情報共有の全体最適に向けてSPIDER+を一層活用できるのではないかと考えています。
バトンをつなぐ根拠と、意見が言える心理的安全性の高い現場づくり

こちらの現場でSPIDER+を導入したのは効率化のためでしょうか。
本来ならば経験年数の少ない若手社員には誰かがつきっきりで指導係を務めるところを、工事には時間や人手にも限りがあります。
そこで、SPIDER+を活用しながら操作を通じて工事全体の中で自身の役割が持つ意義や、作業が次の段階に与える影響を身に着けてもらおうと思いました。
「写真管理がメインじゃないよ」とは普段から話しています。
写真管理については段階をクリアできたので、現在は過去案件の施工図を書かせています。
練習を重ねてこの現場が終わったら一人で案件を担当できるような人材にすることを見据えているのです。
建設現場には役割や立場の異なる従事者が多数出入りしますね。
工事をスムーズに進めるためには何が重要でしょうか。
例えば国際的な陸上の大会では、日本選手団のバトンリレーの巧さはいつも話題にのぼります。
現場でバトンがうまく繋がるためにはそれぞれが「根拠」を明確にできることが欠かせません。
さらに、現場で目の前の事象を具体的に伝えるには個人のスキルに左右される面が大きく、実際には難しい場面も少なくありません。
その点、SPIDER+で写真などを図面に紐づけて情報化することは、コミュニケーションを大きく支援します。
こうした強みを設備工事の方々とも共通基盤として活用できれば、工事全体の進捗をさらに効率化できると考えています。

心理的安全性の高さです。
私自身は、むしろ「雰囲気づくり」も大事な役割だと考えています。
例えば、現場事務所に入りやすいこと。
立場や年齢にとらわれず、気づいたことを率直に伝えやすいこと。
そして、仕事が終わったら気持ちよく帰りやすいことです。
現場では、仕事の中身や根拠を明確に共有する場面では、経験年数や役職よりも内容が優先されるべきだと考えています。
質の高い工事のためには「誰が言うか」ではなく「何を言うか」を重視し、互いに耳を傾けて意思疎通を図りながら施工を進めていきたいのです。
図面はラブレター。想いを届けるためのDXとマインドセット
人手不足や働き方改革が進む中で制約を抱えながらも竣工を目指す人間が集うのが建設現場だと感じます。
当社では一般の戸建て住宅も多々手掛けており、私は地鎮祭に参加します。
そうすると、一人の人間がとてつもないお金とともに、人生をかけていることを請け負うのだといつも実感するのです。
建築という仕事は、誰かの人生について一緒に責任を持つことなのです。
仕事とどう向き合うかという問題ですね。
先ほど彼らが工事写真や帳票書類を含めた仕事について話してくれましたが、当然それらの仕事には受け手がいます。
若い彼らによく言うことがあるのですが、「職人さんを恋人だと思いなさい」と。
相手のことを考えればこそ、自分自身の接し方に問題はなかったか考えます。
図面はラブレターのようなものです。
単に好きですとだけ伝えるのではなく、もっと自分の思いの丈が伝わるよう、どんなところが好きで、どんなことを考えているか、それらがきちんと伝わる図面を書けているか、自分自身で見直すところも沢山出てくるはずです。
工事が終われば、「ラブレター」は建物を通じて一般市民の皆さまに届くのでしょうか。
だからこそ、設計・施工・検査・引き渡しまでの一連のプロセスで、必要な情報を正確に、迅速に、誰もが扱える形でつなぐことが重要です。
SPIDER+は現場のコミュニケーションを可視化・標準化し、手戻りや抜け漏れを減らします。
個々の活用にとどまらず、現場全体の運用設計やルールづくりも含め、さらに改善の余地があると考え、継続的に磨き込んでいます。







