育児も、現場も、DXも。自走型で働き方を進化させる田名部組の挑戦

青森県八戸市に本社を構える田名部組は、経済産業省の『地域未来牽引企業』に選出されたこともある、創業から100年以上を誇る総合建設業です。女性技術者の多さも特徴で、中には育児休暇から復帰して活躍中の社員もいます。
本社と仙台市内の現場にお邪魔し、DX推進に関する考えや、現場で活躍中の技術者にお話を伺いました。
お話 株式会社田名部組
田中茜様(建築部建築二課 副主任)
山本純也様(企画営業部SE係長)
立花大輝様(仙台支店建築部第二事業部長)
星玲華様(仙台支店建築課)
「いつでも・どこでも」確認できる安心感。導入の決め手は情報共有の速さ
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
始めに、現在の田名部組のSPIDERPLUS活用概況をお聞かせください。

SPIDERPLUS導入検討時の課題はどのようなものでしたか。

作業の途中で古い図面を使用していて間違いに気づくことがありました。
変更箇所があれば古い図面の上からノリで貼り付けたりしていました。
実際に活用しはじめて、どのようなメリットを感じましたか。

以前は設計図面を1冊常に持っていましたが、SPIDERPLUSはタブレット1枚持てば十分です。
図面内容が更新された際も画面で更新ボタンを押せばすぐに見られます。
何より気に入っているのはSPIDERPLUSの中に資料など、何でも保管できることです。
現場事務所では壁にかけたホワイトボードに予定を書きますが、SPIDERPLUSの中に工程表を入れることによって予定変更時も事務所に戻ることなく、SPIDERPLUS上の工程表を現場で即座に確認・更新できるようになり、情報共有のスピードが大幅に向上しました。
メモでいろいろ書き込めるのも使い勝手がかなり良いと感じています。

現場にいると職人さんから話しかけられることがよくあります。
紙図面や資料だと置いてきた場所を忘れてしまったり、取りに戻ったりしなくてはいけません。
SPIDERPLUSならば、例えば収まりの確認をしなくてはいけない時もすぐに取り出して、画面を見せながらコミュニケーションができます。
自走型の操作習得、配筋検査の事前準備から育児との両立まで
現場では工事写真で活用することもありますか。

現場では細かく撮って、事務所に戻ってからまとめます。
工種ごと、工程ごとにフォルダを分けると、後から確認する時もすぐに見つけることができます。
写真帳票では黒板内容をそのまま出力できるのでまとめ作業に時間をかける必要がありません。
何年か現場で経験を積むことで、最終的にまとめたい帳票内容を見越して、黒板内容を事前に作るようにもなりました。
また、矢印アイコンも便利です。
パトロールの際、是正事項を指摘された部分がわかるよう、図面上に矢印や引き出し線などで目立たせると、見るべき箇所を即座に伝えることができます。
田中様は育児休暇から復帰して、現在も育児をしながら現場で技術者として仕事をしているとのことですね。
お子様のことで急にお休みをとることがありますか。

今の現場は規模の大きなものではないため、人手に限りがあります。
例えば子どもが体調不良で私が仕事を休まなくてはならない時に、先輩社員に代役を頼むことがあります。
そういう時にSPIDERPLUSのデータをお互いに見ながら工事予定や作業について明確に引き継ぎをすることができるのでとても重宝しています。
操作方法はどのように習得していますか。

そこで覚えたことを元にしながら、最近では操作説明動画やウェビナーを見ることが多いです。
ウェビナーは日時が決まっているので「見よう」という気にさせられます。
最近はアーカイブもあり、復習に役立てています。

他の現場で先輩が残したデータを見ながら写真の撮り方などを学んで、目の前の作業にSPIDERPLUSの使い方を役立てることがよくあります。
それから仕上検査のチェックリストや配筋検査の機能も自分でも試してみながら覚えていきました。
現場では初めて経験することも多いので、想像では追いつかない工程を効率的にこなすため、過去データを見ながら学ぶようにしています。
杭・配筋検査についても、マニュアル動画で学んだ内容を試してみました。
動画の説明内容がわかりやすかったので、自分が実際の検査でどう操作すればいいかを理解することができました。
動画で学んだことを元に、各リストの中で梁の種類ごとに1箇所ずつ写真をとって、図面に紐づけていきました。
基礎部分で10箇所はあったと思います。
事前準備は一度整えてしまえばあとは現場で写真を載せてメモを添えていくだけですし、検査項目も表示されるので便利だと感じました。
ここまで自主的に学んで実践できるのは驚きです!

あらかじめ自身で学んだことが色々あると、質問内容も具体的なことが多く、どちらを選べばよいかを判断すれば済むのです。
現場をまとめる立場として、SPIDERPLUSのメリットを感じるのは必要な情報アクセスの速さです。
紙ベースの仕事のしかたでは、まず必要なものがどこにあったかを特定することから始めて、紙の束からそれを探さなくてはならなかったのです。
現場の職人さんたちにはベテランの方も多く、サイズが1つしかない紙図面では見づらいこともあります。
SPIDERPLUSでは拡大表示や明るさ調整が可能なため、視認性が高く、ベテラン職人にも好評です。

当社は自走型の社員が多いですが、ほとんど一人で習得していく様子を見ていると、ものすごく心強いと感じます。
支え合いが文化になる。多様な人材が活きる職場づくり
現在の活用状況について、自己評価をするならそれぞれどのぐらいでしょうか。

まだまだ、機能の把握や実践について個人差があります。
活用例の横展開も課題です。
世間話の中で自然とSPIDERPLUSの活用方法にふれることも多いです。
新入社員が入ってきたら、彼らにも使い方を伝えて、使いこなせるようになると全体の活用状況をもっと引き上げていくことになると思っています。
また、月に1度、建築部の会議があります。
会議書類にはSPIDERPLUSに保管している工程表を貼り付けたり、写真を載せたりしています。

あらかじめ準備をすることで、現場で作業をラクにできますし、撮影後の写真管理もラクです。
検査の効率化への活用が残りの15%だと思っています。

活用の仕方次第では、情報共有をさらに効率化できると感じています。

それぞれがどのように活用して現場進捗に役立てているかを把握し、改善の取り組みを進めていくことを考えています。
田名部組様では5年におよぶ行動計画を2025年初頭に発表されましたね。
現場でも若手社員、女性、ベテランがそれぞれに活躍している印象があります。

産休・育児休暇に入る際、現場の仕事に復帰するのは難しいだろうかと思いもしたのですが、部長が「仕事の割り振りを考えればいいんだろう、俺に任せろ」と言ってくれたのを覚えています。
これまでの経験を断絶させることなく、仕事を続けていくことができるのは本当に良いと思っています。

年代の近い人だと何かと心強さを感じることが多いです。
現場で接する職人さんは両親よりも上の年代の方が多いです。
皆さん一人ひとりが様々な知見を持っているので、まず聞くことを大切にしています。
仕事なので聞くだけではなく、必要なことは言うようにしています。バランスの見極めが大事ですね。

建設現場ではコミュニケーションがものすごく重要です。
女性のほうがコミュニケーションで男性よりも圧倒的に優れていますし、コミュニケーションがスムーズだと現場全体の雰囲気もよくなります。それに、コミュニケーションがしっかりとできることによって、それぞれが仕事内容を明確に把握できますし、安全や品質を大きく違えてくるのです。 そのために、聞きやすい環境を作ることを重視しています。
業界1年目、2年目は分からないことがたくさんありますが、同時に聞きづらいと感じることも多いです。
監督どうしが話をしないとミスに繋がることが現場には沢山あるため、聞きやすいこと、話しやすいことは重要です。
SPIDERPLUSを一緒に見ることでこうした「聞きづらさ」を緩和する効果もあると思います。
今後のSPIDERPLUS活用やDX推進で目指していきたいことをお聞かせください。


省力化できることや、そのために使える機能がまだあると思っています。

現場ではとにかく仕事が多いですし、効率よく進めていかないと前に進むことが難しく、結果的に夜遅くまで長く働くことになってしまいがちです。
働き方改革関連法の適用も始まり、週休2日制の確立が業界全体として次の課題のように言われていますが、皆が出来ているわけではありません。
当社がその方法を確立しながら、地域の協力業者も巻き込んで、よりよい働き方を目指していきたいです。

導入当初には慣れた紙ベースの方法で業務が出来ているから別にいらないのでは、という声もあったのですが、全社的な活用を引き上げていくことでスパイダープラスが困るぐらいに要望を出せるようになり、全社的に業務改善が進むことが目標です。