沖縄地場ゼネコンの現場がDXに成功したポイント
- セミナーレポート
スパイダープラス株式会社は2021年10月6日(水)に「沖縄・地場ゼネコンが取り組む現場のDX」をテーマにしたウェビナーを開催しました。
建設業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進むなか、地方ではDXが遅れているといわれています。今回のウェビナーでは沖縄県の地場ゼネコンである屋部土建様にご登壇いただき、建設DXアプリ SPIDERPLUS の導入から現場の取り組みついて伺いましたので本記事で内容の一部をご紹介します。
目次
20%の社員が月20時間以上の業務時間削減に成功
屋部土建様が SPIDERPLUS を導入した結果、利用する社員の約20%が月20時間以上の業務時間削減に成功しました。そんな屋部土建様がなぜ SPIDERPLUS を導入したのか社内で抱える課題から伺いました。
屋部土建が抱える課題とは
屋部土建様は主に3つの課題を抱えています。
- 生産性
- 現場の業務効率
- 若年層の人材確保
執行役員常務 兼 社長室長の入佐様は、どこの建設業も同様の課題を抱えているかもしれないと前置きしたうえで、2024年4月から建設業に関しても時間外労働の上限規制が適用されることもあり生産性を上げるために現場の業務効率化が必要、また業務効率化されないと入職者の減少が止まらない、さらに確保した人材をいかに早く一人前に育てるかも課題であると感じています。
課題解決のポイントは
課題を解決するために屋部土建様では「DX推進」と「目標の設定および取り組み」がポイントになりました。
DX推進(システム導入)
入佐様は毎月各現場の請求書の決裁業務をおこなっていて、その業務中にあることに気づきます。なんと複数の現場で異なる写真管理システムを導入していました。そんな状況を知り、導入するシステムを社内で統一することにより業務の効率化が図れるのではないかと考えました。この日常業務の気づきがきっかけとなりDX推進が加速し、SPIDERPLUS の導入へと繋がりました。
システム導入のポイントや SPIDERPLUS 導入までの流れは後述します。
目標設定と取り組み
新しいシステムを導入しようとすると導入自体が目的になってないか?と感じることがあると思います。屋部土建様ではそうならないように SPIDERPLUS を導入の際「目標」を掲げ、実施すべき「取り組み事項」を決めました。
屋部土建様が掲げた目標と取組実施事項は下記のとおりです。
<目標>
iPad と SPIDERPLUS を活用した業務効率向上と生産性向上および働き方改革への成果
<取組実施事項>
- 建築工事部全員に iPad(ペン含)と SPIDERPLUS を貸与
- SPIDERPLUS を建築工事部全員が使えるようになる
- iPad および SPIDERPLUS をフル活用するための計画を立てる
- 利用を通し、先輩・後輩間のコミュニケーションを活性化する
- 半期ごとに実施状況の測定・評価・改善を行う
実施事項を定めることにより、目標達成への寄与、ならびにDX推進の継続化かつ活性化が期待できます。
システム導入のポイント
システムを導入しようと思っても、いざ何から具体的に進めればいいのか悩んでいる人も多いと思います。屋部土建様は、システムはあくまで道具に過ぎず、何のために導入するのかを明確にすることが重要と考え、社内へのシステム導入のポイントを下記のとおり挙げています。
社内導入のポイント
- 導入が目標になってしまわないように注意
- 導入前に仲間・推進チームを作る
- 現場目線(実際に使う人目線)で効果があるシステムを選ぶ
- サポート体制が充実しているシステムを選ぶ
- デモを依頼してシステムを理解する
屋部土建様の場合、現場目線での操作性だったり、デジタルやクラウド環境が苦手な社員が安心してサポートが受けられる環境だったり、現場ファーストで最適なシステムを選ばれたとのことです
SPIDERPLUS 導入の流れ
屋部土建様では、SPIDERPLUS 導入以前から Google Workspace (旧 G Suite) を利用していたり、全社員に iPhone を貸与していたり、クラウド環境にメリットを感じていました。 そのため、導入するシステムを選ぶ際は効率の良さや情報共有のしやすさを優先したためスタンドアロンのシステムを候補から外し、クラウド環境で提供している写真管理システムを扱うベンダー数社に製品のデモ版を依頼し比較検討されたようです。
参考までに、屋部土建様が製品のデモ版を依頼してから導入決定に至るまでの流れは下記のとおりです。
- 製品のデモ版を依頼
- デモ版の試験導入
- 試験導入アンケートの実施
- 役員へのプレゼンテーション
- 導入決定
屋部土建様の場合、役員が施工管理を経験されていて写真管理の大変さに理解があったので役員へのプレゼンテーションにてデモンストレーションをおこない、すぐに導入が決まりました。そのプレゼンテーションでは、試験導入の社内アンケート結果を発表し、システムを工事部門で利用することでさらなる効率の向上が期待できることも伝え、役員に納得してもらったとのことです。
企業によってはセキュリティ面の都合でクラウド環境の導入が困難であったり、施工管理経験のある役員が不在だったり、システム導入のハードルが高くなりそうですが、屋部土建様のような環境下であれば導入までのハードルは低く、意外とスムーズに話が進むかもしれません。
SPIDERPLUS 導入後の成果
これまではシステム導入に至るまでの話でしたが、SPIDERPLUS 導入前の課題感と導入後の成果について現場を担当している建築本部建築工事部 課長の小渡様にお話を伺いました。
※導入後に業務時間がどの程度削減されているか社内アンケート調査もおこなっております。調査結果は後述します。
もともと複数の現場で異なる写真管理システムを利用していたことが SPIDERPLUS を導入するきっかけだったため、SPIDERPLUS を利用して写真管理することになったことはもちろんのこと、そのほかの業務でも成果が出ているようです。
小渡様に話を伺ったところ、現場の業務にてSPIDERPLUS の使用頻度が一番高いのは図面の閲覧、重宝しているのは配筋検査であるといいます。
業務ごとにシステム導入前の課題と SPIDERPLUS 導入後の成果を小渡様に伺ったので、一部ご紹介します。
図面閲覧・携行
<従来の図面閲覧・携行の課題>
- 確認のたびに現場事務所との往復が発生(特に巨大な施設は大変)
- 現場携行物(本図面、施工図、施工計画書 等)が膨大に
※従来は小分けにした図面を携行
※小分けにした図面だと自分の位置がわからなくなり不便 - 紙図面へのメモがアナログで属人的
<SPIDERPLUS 導入後>
- 現場事務所との往復を削減
- 現場携行物はタブレットのみ
- 図面データをフォルダで整理
- 現場のメモをデジタルで記録
- 図面更新・再配布対応もラク
- 急な確認・打ち合わせの対応が可能
- タブレットは図面を拡大できるので便利
▲SPIDERPLUS 導入前
▲SPIDERPLUS 導入後
杭施工記録(電子黒板)
<従来の杭施工記録の課題>
- 杭1本に付き20枚程度撮影
- 徹夜で文字板を手作り
- 黒板を4~5枚準備して撮影
<SPIDERPLUS の特徴>
- 杭番号毎に写真を記録、各確認項目で進捗が確認でき、工事進捗と写真記録の有無がわかる
- 撮影進捗毎にアイコンの色が変わり、次の各確認項目が図面上に表示されるため、記録進捗がわかる
- 杭番号毎にシート分け、確認項目順の写真台帳の出力ができ、事務作業が不要
<SPIDERPLUS 導入後>
- 撮った箇所がひと目で分かり撮り忘れがなくなった
- 事前に電子黒板の準備をしてるので、現場で慌てず撮影できる
- 写真撮影済みの箇所が伏せ図にて一目でわかるので、撮影の重複がなくなり業務がスピードアップ
▲SPIDERPLUS 導入前
▲SPIDERPLUS 導入後
配筋検査
<従来の配筋検査の課題>
- 配筋検査リストの準備(黒板の事前作成等)が大変
- 撮影・検査漏れの照合が大変
- 台帳作成に時間がかかる
<SPIDERPLUS の特徴>
- 配筋リスト切り出し機能+BPOができ、検査の準備が容易にできる
- 事前に計画、図面上の撮影記録箇所にアイコンを設置し、撮影記録漏れを防ぐ
- 写真台帳を素早く作成できる
<SPIDERPLUS 導入後>
- 写真を撮りながら自主検査ができる
- 写真の撮り漏れがない
- 写真帳は事務所で打ち出すだけ
そのほかに、今まではA1用紙に配置図や構造図(スラブ、柱、壁 等)のリストを壁に貼り付けて、チェック項目表を作成して現場に持ち歩いていた点も改善されています。
スパイダープラス社のお客様からは、雨の日はラミネートする必要があったので大変苦労するというお話もよく聞きます。デジタル化することで、そのような気が重くなる業務の削減が可能です。
▲SPIDERPLUS 導入前
▲SPIDERPLUS 導入後
仕上げ検査
<従来の仕上げ検査の課題>
- 検査時のメモの転記、業者別の是正指示書作成が大変
- 是正箇所の照合が大変
<SPIDERPLUS の特徴>
- 竣工検査での記録事項をプルダウンからの選択で簡単に入力できる
- 指摘事項の業者別帳票出力が簡単にでき、作成時間が大幅に削減できる
- 指摘番号と指摘写真を紐付けられるので、協力会社への是正指示もわかりやすい
<SPIDERPLUS 導入後>
- 業者別の是正指示書が 簡単に作成できる
- 是正箇所が図面に紐付いているので確認が容易
特にマンションやホテル等の戸数が多い現場だと指摘事項を業者別に振り分け作業が大変だと思います。お客様の事務所に伺うと、山積みの資料があり、そこで手書きでマーキングして協力会社様へFAXやメールで送信している姿を見かけることもあります。SPIDERPLUS を導入し活用すると、アナログで作業するよりも是正指示書や帳票の出力の手間を減らすことが可能です。
▲SPIDERPLUS 導入前
▲SPIDERPLUS 導入後
業務時間の削減に成功
屋部土建様では、SPIDERPLUS 導入後に社内向けにいくつかアンケート調査を実施しました。
1日あたりの残業時間が2時間前後以上の社員が約39%いましたが、SPIDERPLUS 使用後、20時間以上業務時間を削減できた社員が約20%いました。さらになんと40時間以上削減できた社員が7%近くいました。
この結果に入佐様は「こんなに削減できるのかと驚いた。20時間、40時間削減できた人は写真管理を中心にやられていたかたで、入れた甲斐があったことを実感した」と感想を述べました。
また、屋部土建様における SPIDERPLUS で業務効率化につながった業務や内容として、「図面閲覧・携行」と「写真整理」が同票数で一番多い結果でした。
スパイダープラス社にて、2020年3月に SPIDERPLUS の全ユーザーを対象にアンケート調査を実施したところ、42.7%が月20時間以上業務効率化できるようになったと回答しています。
社内普及をもっと進めるために取り組んでいくこと
SPIDERPLUS 導入後、業務効率化の効果が出ていることがわかりましたが、社内アンケートの結果、もっと支援が必要であることも同時にわかりました。今後、屋部土建様ではDXの加速と支援のための技術委員会を発足して育成の計画や社内のサポート体制を整え、スパイダープラス社とともにオンライン操作説明会を実施していく予定です。
また SPIDERPLUS をもっと効率よく使用するために、社内規格や運用ルールを定めてさらに効率アップを図り、建築工事部の全社員に貸与する iPad を社員教育に活用する等 iPad で出来る業務を増やしていくことも入佐様は考えているようです。
スパイダープラス社としては、これからもお客様から一番近いフィールドセールス、お客様からのお問い合わせに対応するサポートセンター、SPIDERPLUS をより理解してもらうための勉強会を実施するカスタマーサクセスのチーム構成で屋部土建様ならびにユーザー様を手厚くサポートしていきます。
おわりに
ウェビナーの最後は、参加された皆様からお預かりした質問に対して回答するコーナーを実施し、登壇者から一言ずつもらい終了しました。
当ウェビナーに参加された方の感想をいくつか紹介します。
- 製品デモの具体的な内容・方法について知りたい。
- 全社で統一して活用出来たら効果が出るのではないかと感じた。
- 屋部土建様の活用事例のように活かしたい。(導入済みの参加者)
- 実際に使用している様子、又は画面遷移等(動画)を見たかった。
- 本日の建設業界以外の会社の取り組みも、もっと伺いたいと思いました。弊社は調査業務が多いため、そのような会社ですと特に参考になります。
SPIDERPLUS について気になった方、もっと知りたい方はお気軽にお問い合わせください。DXを推進したいけど何から始めれば良いか悩みを抱えている方も大歓迎です!
問い合わせのハードルが高いと感じられる方は、定期的にセミナー、ウェビナーを開催していますので是非ご参加ください。
企業情報
株式会社屋部土建(やぶどけん)
代表者 代表取締役社長 津波 達也
本社所在地 沖縄県名護市港2丁目6番5号(名護本店)
設立 昭和25年(1950年)3月
事業内容 総合建設業
スパイダープラス株式会社
代表者 代表取締役社長 伊藤 謙自
本社所在地 東京都豊島区東池袋1丁目12番5号 東京信用金庫本店ビル 7階
設立 平成9年(1997年)9月
事業内容 ICT事業